プレプリントが新たな研究に光を当てる

ジャーナルにアクセプトされる前に科学論文のドラフトを公開する場合、その原稿は、「プレプリント」と呼ばれます。研究者がそれらの未発表の論文を公開し、サイエンスコミュニティーの人々が読めるようにするウェブサイト(記事後半参照)がいくつかあり、このようなサイトは、公表したい重要な新たな知見がある場合や、他の人が用いることで利益となる方法を構築した場合、役立ちます。査読者と同じように批判的にプレプリントを読むことは、研究者自身の読解とレビューのスキルに磨きをかける事にも繋がります。

プレプリントの利点と問題点

利点

  • 新たな知見を得るペースと効率が促進されます
  • 実施した研究に対してフィードバックが早く得られます
  • 重大局面において、素早い臨床診療の形成に役立ちます
  • あなたの研究の価値、および研究者としてのキャリアの初期における成果を示します
  • 新たなアイデアを、他の研究者に提示します
  • 完了した研究を他の研究者に知らせることで、研究の無駄を減らします

問題点

  • ミスに対する公のコメントにとまどうかもしれません。プレプリントは登録後、DOI(Digital Object Identifier)を取得すると、完全には消去できません
  • プレプリントの段階では、論文はまだ正式もしくは厳格な査読を受けていません
  • 目標ジャーナルが事前にプレプリントの登録を認めているか、必ず確認しなければなりません
  • ジャーナルがプリントに事前に登録することを認めていても、ジャーナルのテンプレートを使う(採択を意味する)ことはできません
  • 他の研究者が、査読を受けていない資料を、参考文献として用いることができない可能性があります
  • 研究について、時期尚早なメディア報道を受けるかもしれません
  • 特許申請を予定している場合、研究のプレプリントにより特許申請にダメージを与える可能性があります

よく使われている/推奨されているプレプリントサーバー

NIH Preprint Pilot

  • SARS-CoV-2とCOVID-19に関するプレプリントをより見つけやすくすることを目的とした、NIHがサポートするパイロットプログラムです
  • プレプリントは PubMed Centralから検索可能です
  • medRxivbioRxivarXivChemRxivResearch Square、SSRNからのプレプリントが含まれています
  • まとめと取り込みのワークフローが改善、自動化され、拡張可能になることで、NIHがサポートする、幅広い研究から得られたプレプリントが含まれるよう、パイロットの拡張が予定されています

medRxiv(「メッドアルカイブ」と発音されます)

  • medRxivは「害の可能性を下げる(reduce the potential for harm)」ことを目指しています。すべての投稿において、盗用、非科学的な内容、不適切な論文の種類(オピニオン論文、ケースレポート等)、もしくは一般社会や患者に与えるリスクについてスクリーニングされます
  • COVID-19 SARS-CoV-2に関する新規の研究への早期アクセスのように、スクリーニングプロセスを実施しつつも、プレプリントが「スピードと開放性の利点(the advantages of speed and openness)」を保ち、提示することを目指しています

Preprints.org

  • Preprints.org は、早い、シンプルな投稿プロセスを行います
  • 可視性の高さが特徴で、Europe PMCGoogle ScholarScilitSHARE PrePubMedにプレプリントをリポストします
  • COPE(Committee on Publication Ethics)のCode of Conduct and Best Practice Guidelinesに従います
  • プレプリントは、オープンアクセスライセンスの下、公開されます

Europe PMC

  • 186,000を超えるプレプリントについて、ジャーナルで発表された論文と共に検索可能です
  • プレプリントが出版されれば、出版された論文のリンクが共に表示されます
  • 多くの国際的な科学関連の出資者に人気があります。「grant finder」の機能を有しており、80,000を超えるのバイオメディカルの助成金を検索できます

注意点

プレプリントサーバーに自分の研究を公開する場合、注意するポイントは次の通りです。

プレプリントの段階では、論文はまだジャーナルレビュアーに評価されておらず、この段階の論文には、データの解釈に誤りがある可能性があります。プレプリントサーバーは、読者が論文に対して公にコメントすることができ、誰でもそのコメントを見る事が出来る反面、一般的に、プレプリントは公開およびDOI(Digital Object Identifier)取得後、完全に消去することが出来ません。

さらにジャーナルによっては、プレプリントサーバーに公開された論文を受け付けない場合があります。プレプリントに公開前に、目標ジャーナルの条件と規則を確認してください。もしジャーナルがプレプリントを認めたとしても、プレプリントのファイルにジャーナルのテンプレートを使ってはいけません。テンプレートを使うことは、ジャーナルが既に論文を採択したことを意味しますが、その段階ではないからです。

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