英語が母国語でない人が、英語で医学留学すること

by Carolina Severiche Mena, MD

医学を学ぶことは、非常に困難です。海外で医学を学ぶことはさらに困難です。英語を母国語としない人が、英語で医学留学をすることは、さらにハードルがあがります。

そのような状況にも関わらず、私は医学留学の道を選びました。

どの医学生も、アカデミックな圧力、競争、患者の死への直面、情緒的消耗感などを含んだ、重々しい挑戦に直面します。留学生はこれらに加え、ホームシック、カルチャーショック、言葉の壁、異なるコミュニケーションの方法など、更なる課題が加わります。

このようなさらなる困難があるにも関わらず、多くの熱心でやる気に満ちた留学生たちが、外国語で医学を学ぶ選択をしています。多くの留学生は、英語を話す環境に身を置きます。彼らの多くは米国、英国、英語のプログラムがあるEU諸国、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカなどを留学先として選びます。また、渡航先としてカリブ諸国も、留学生の数が増加しています。

留学生達は、なぜそのような困難な道を選ぶと思いますか?私の場合は、新しい学びの機会や、ネットワークを広げられること、そして将来海外で働くという自分の夢を実現するために役立つかもしれない関係を築けるところに留学の魅力を感じました。他の人たちは、ハーバードやイェールのようなエリートの集まる大学で学ぶため、もしくはメイヨークリニックやジョンズ・ホプキンズのような有名な病院で働くため、あるいは、メモリアルスローンケタリングがんセンターなどで、免疫療法研究のような先端医療研究をするために、医学留学をしています。

留学した理由が何であれ、私が出会った留学経験のある医師たちのほとんどは、留学終了後に帰国したか、海外に留まることにしたかに関わらず、留学経験がより良い将来のための道を開いたと感じていました。海外に留まる者においては、給与やキャリアアップの機会が、母国よりもはるかに優れている場合があり、母国に帰る者も、質の良い暮らしが待っている可能性があり、医学留学経験は履歴書において、しばしば大きなプラスとなります。

しかし、医学留学にはいくつかの課題があり、ここではその課題について話したいと思います。そういった課題は、私自身も直面した経験があり、それらの困難を乗り越えるために、いくつかのヒントをまとめました。

第一に、語学を集中的に学びましょう

私は医学部3年目が終わる頃に、英語の語学留学を決意しました。すでにそれ以前に、アメリカで医学を学び、職に就く事に興味を持っていましたので、その目標を実現するために、英語力を強化する必要があると感じたのです。コロンビア出身で、スペイン語を母国語とする私は、発音、スペリングや文法など、第二外国語としての英語 (ESL)を習得する者の一般的な課題で苦労しました。そのため、医学を志すための第一歩として、1年間のスカラーシップ・プログラムで、英語の語学留学をしたのです。

私は、スカラーシップ・プログラムの一環として、大学のESLのクラスを受講しました。ただし、私の学習はESLのクラスを受講することにとどまりませんでした。医学系イベントへ参加する事で、英語でネットワークを構築する様に、自ら仕向けました。その他、英語の医学書を購入することで、常に学んだことを強化し、適応し続けました。

空いた時間に何をしようかと予定を立てる時は、英語のスキルのためだけではなく、自分を受け入れてくれた国についての理解を深められる、アクティビティーをしようと決めました。そこで、博物館や、演劇、その他文化的な活動をすることで、私の読解力やリスニングが強化されました。

その結果、1年間の英語の語学留学は、私の医学への道にとって、欠かすことの出来ないものとなりました。それは単に日々英語の読み書きや、英語で話すことを経験しただけではなく、米国の文化を理解する基礎となったのです。

著者からのアドバイス: 私が語学留学をしたのは、英語を体にしみこませることが、英語習得の理想の学び方だと思ったからです。もし語学留学をするのなら、現地での時間を有効に使い、英語のスキル強化と応用が出来るアクティビティーを探してみてください。そして、ぜひ国際基準の英語能力測定試験であるTOEFLテスト (Test of English as a Foreign Language) を受けてみてください。なぜなら、恐らくあなたの英語力は、現地にいる時にベストな状態だと言えるからです。TOEFLの最低合格スコアは大学によりますが、100を目標にすれば、ほとんどの大学や教育施設が求める英語力に到達しているでしょう。

海外で医学の道につながるチャンス見つけよう

医学部4年生の時、私は自分が次のステップに進む準備ができたと感じました。医学生としての成長する事と共に、グローバル市民になろうと思ったのです。私は、医学部4年生の時に米国の病院でクラークシップ(臨床実習)をすれば、自分の国の教育システムとは異なる環境で、臨床診療と医療技術を経験する機会を得られると思ったのです。それらに加え、アメリカの大都市で働けば、世界中から集まった様々な患者に出会え、彼らを治療することで、多くを学ぶ事が出来ると考えたのです。私は海外の教育システムに身を置き、アメリカの大都会で働くことは、私が経験したい事を実現するのに、不可欠だと感じていました。なぜなら医療には、メディカルスキルと、ソフト面でのスキルのふたつの側面があるからです。

よって、私は、Global Educational Exchange in Medicine and the Health Professions (GEMx)の交換留学プログラムに参加するため、応募しました。GEMxは、Educational Commission for Foreign Medical Graduates (ECFMG: 米国 外国医学部卒業生のための教育委員会)プログラムのサービスで、国際的な医学部卒業生の資格を査定し、米国の卒後医学教育(例えばレジデンシーやフェローシップ)を始める前に、彼らが米国で臨床教育を受ける資格があるか審査します。私がGEMxのサービスを選んだのは、 私が通っていたコロンビアの学校のパートナー機関であったからだけではなく、ECFMGとの関係も、その理由の一つでした。

私はニューヨーク州ブルックリンにある、インターフェイス病院(Interfaith Hospital)の内科のプログラムに受け入れられ、2か月間のローテーションに入りました。インターフェイス病院にいる間、臨床推論や、プレゼンテーションスキル、メディカルライティングを学びました。そこで経験したことは、全般的に素晴らしいものでしたが、事前に準備をしたにも関わらず、非ネイティブ・スピーカーには、困難な挑戦でした。この経験を通して、職場での環境の中で英語を使うことは、新たなエキサイティングな挑戦であると確信しました。

著者からのアドバイス: 医学部4年次に選択ができる、米国での医学選択科目プログラムは多数あります。しかし、それらのプログラムの全てがあなたの医学のキャリアにマッチするわけではありません。あるプログラムに参加するためには、既に語学をマスターしていることが必修となります。また他のプログラムは、そういった要件がなくても、参加には高額な費用がかかるでしょう。あなたの持っている資格と、財政状況に応じて、あなたにとって適切なプログラムを選びましょう。GEMxのサービスもぜひ確認してみてください。私の場合は、医学留学費用がカバーされていましたし、GEMxのサービスに満足しています。私が自分で負担したのは、航空券代と、住居費、健康保険の料金のみでした。

英語が母国語でない人が、英語で診療すること

私は世界中で最も多様な都市の中のひとつで、クラークシップを始めてから最初の一週間以内に、海外で働くことがどれだけ困難か、新しい意味で理解するようになりました。どんな言語でも、正式なルールがありますが、ネイティブと非ネイティブにとって、言語には数えきれないくらいの様々なニュアンスがあります。医療の略語や、スラング、なじみのないアクセントなど、それまでの私の言語の学習において、教わったことのない新しい単語や発音に出会いました。

ある日、指導医が、ABG (arterial blood gas)について私に尋ねました。その頃、コロンビアではABGという用語を使っていなかったので、私は彼女が何を聞いているのか、全く分かりませんでした。同様に、私の非ネイティブ・スピーカーの患者の一人が吸入器スペーサーを必要としていた時も、私はそれが何を指すのか、理解に苦しみました。しかし、私はそれらの言葉自体を知らないのはいいけれど、彼らの意図する内容を理解できないのに、理解したふりをして、その後何も行動を起こさずにやり過ごすことは良くないことを悟りました。分からなければ、分からないと声を出し、尋ねましょう!

公平を期すために書くと、私はおそらく最初の1、2週間は職場で発言をしませんでした。しかしその後すぐに、発言することが、自分自身と患者のために私がするべき、正しい事だと分かったのです。あなたが、そのような場面に遭遇した時、決して恥ずかしがらないでください。外国で働くということは、あなたが医師として、また一人の人間として成長するための、素晴らしいチャンスです。必要な質問をすることは、学ぶことに繋がりますが、あなたの欠点や、弱さをさらけ出すことでもあります。でもそうすることによって、あなたが他の人と同様、一人の人間であると気づいてもらえるでしょう。

朝の回診で患者を診察する際や、医療チームのメンバーとコミュニケーションをとる時も、質問をすることは、非常に役立ちました。レジデント(研修医)や、ティーチング・フィジシャン(指導医)に自分の職場でのパフォーマンスを気にかけていることを示したら、彼らは熱心に助けてくれました。結果として、私はより良い仕事ができ、医学についてさらに学ぶことができ、それ以前よりもっと患者を思いやれるようになりましたし、英語力もアップしました。

私からのアドバイス: 助けを求めることや、物事を明確にすることは悪いことではありません。しかし、聞くことを恐れ間違いを犯すことは、あってはなりません。私たちは皆、時々手を止め助けを乞い、質問や伝えられた内容を明確にする必要があります。それはいつも簡単に出来ることでないことは承知です。私の場合、ストレスが多い状況だったり、早いペースで物事が進んでいる時など、診療の進行を遅らせたりするのではないかと心配になりました。ですが、私は自信を持って助けを乞うように、自ら仕向けました。その結果、私と私の患者両方にとって、より良い経験となったのです。

ホームシック、カルチャーショックと適応能力

語学の問題以外にも、海外留学や外国で働く際、医学生はしばしば困難な問題に直面します。最も一般的な二つの挑戦は、ホームシックとカルチャーショックです。私もそれらにぶつかりました。あなたが思い切って海外に渡った場合、どこかの時点で私と同じ問題にぶつかる可能性が高いでしょう。

ホームシックは、故郷とそこにあった、すべての居心地のよい物事から離れる事による、心の痛みです。医学留学生は最初の数か月間、 馴染みのない習慣や、外国語、食べたことのない食べ物に囲まれ、頻繁に自分が場違いな所に来たのではないかと感じたり、自分の居場所を見出すのに苦労したりします。私が最初に米国に行った時がそうでした。その時、私は人生で初めて長い間、家族や友人から離れる経験をしました。さらに私は留学の際、自分が好きなもの、例えば私の読書への情熱の支えとなる本など、多くの大切なものを留学先に持っていくことが出来ませんでした。それらへの対処方法として、私は英語を練習するための執筆プロジェクトを始めたり、新らしく何冊かの英語の本を買ったり、自分と同様の経験をしている友達を作ったりしました。同じ境遇にいる友達を持つことで、互いに容易に共感し合ったり、慰め合う事ができました。また、私は自分自身を元気づけるために、エクササイズをしたり、心身ともに英気を養うための健康的な食事作りを学んだりしました。その結果、私は米国での居心地のよさを見つけることが出来たのですが、カルチャーショックの影響を未然に防ぐことはできませんでした。

カルチャーショックは、心理的、物理的な衝撃を受ける現象で、人が海外で暮らす際に発生します。カルチャーショックには、4つの段階があり、それぞれハネムーン期、危機期、調整期、順応期と呼ばれています。ハネムーン期は最初のステージで、新しい文化に対し非常にポジティブな感情を持つ特徴があります。その少し後に、危機期が訪れます。このステージは人々に負の影響をもたらし、文化的違いによる不快感と不満を感じるため、最も困難な期間だと言えるでしょう。 しかし調整期に入ると、人々は少しずつ新しい環境にも慣れ、そこでの居心地がよくなってきます。順応期は、カルチャーショックの最終段階です。このステージは、人々が新しいカルチャーにうまく溶け込んだ時に起こります。これらのステージが、それぞれ他の人と違うタイミングで訪れたり、程度の違いがあったとしても、それは至って普通のことです。

カルチャーショックは、医学留学生が特に共通して直面する課題だといえるでしょう。なぜなら医学留学生たちは、患者の病気や健康に対する個人的、社会的な経験にうまく対応することが出来なかったり、自分自身が体験する職場のプロフェッショナリズムや人間関係の現状に対応するのに苦労したりするからです。私の場合、ブルックリンのインターフェイス病院で働く上で、それまでコロンビアでは経験したことのない、 人種に基づく深刻な社会的不平等を直に体験しました。これらは、アフリカ系アメリカ人やヒスパニック系の人たちの間に存在する健康の不平等や、弱者に対するメンタルヘルスケアへのアクセス不足、そして必須医薬品の高さなどが含まれます。この事は、健康の社会的決定要因を理解することの重要さを、私に教えてくれました。

さらには、米国の自分の職場の文化規範が、私がそれまで慣れ親しんだものと、大きく異なることを理解しました。コロンビアは、オープンな文化傾向にあり、例えば教官が生徒にハグをしたり、テキストメッセージを送ることは、大した問題ではありません。しかし、もし同じことが米国で起これば、人々は明らかに眉をひそめるでしょう。 米国では、同僚との距離感でさえ、コロンビアで私が慣れ親しんだものより、明らかに大きく、それは同僚が同性、異性に関わらず当てはまります。私は同僚との関係において、大きなミスを犯す事はありませんでしたが、最初の頃は、同僚との距離感に少なからずショックを受け、時には気分を害することもありました。同僚との距離感が米国ではコロンビアより広い事で、最初の頃は、自分が何か間違いを犯したのか、もしくはそれが単に米国では当たり前のものなのか、考え込むことにより不快感を感じていました。でもそのうち私はそれらの経験は米国ではごく普通の事であることを知り、私がそれ以前に慣れ親しんだ自国の職場環境とは違うだけだったと理解しました。

もしあなたが医学生で、海外で学んだり働くことを計画しているのであれば、ホームシックやカルチャーショックの影響について知り、現地でそれらの感情が現れた際に、どのようにして対処すればよいかを、出発までの間に考えておくとよいでしょう。そうすることで、あなたの臨床体験がより楽しいものとなり、関わるすべての人にとってより生産的なものとなるでしょう。あなたを受け入れてくれた国の文化的な規範、価値観、信仰について事前に調べ、臨床診療に就く準備をしてください。もっとも一般的に起こる患者の症状や、その国の臨床ガイドラインについて学び、ほかの留学生から各ローテーションにおいて、どのリソースを使うのが適しているか、アドバイスを求めましょう。最後に、オープンな心を持ち、他の人や物事に共感してください。私たちは皆、同じ人間なのですから。

2か月目の終わりには、私と同僚との距離は近づいてきたように思えましたが、やはり私の故郷のコロンビアの初日から味わえるような親近感ではありませんでした。しかしそれ自体が私にとって良い教訓となりました。あなたを受け入れてくれた国は、様々な面であなたの国とは違うのです。

著者からのアドバイス: 振り返って考えてみると、また過去に読んだ本によると、出発前にホストカントリーについて学ぶことで、ホームシックやカルチャーショックに影響を与える多くの要因は、避ける事が出来たのではないかと気づきました。留学先の国の(もしくは住む予定であるその国の地域や市の)民俗誌を読んでみてください。あなたの新しい業務での専門用語や実務基準についても読んでみましょう。最後に、対人関係の文化的規範についても調べておいてください。初対面の挨拶をした時や、話しをする際の互いの距離などは、すべてその人の文化的背景によって異なります。Amazonで売っている、人類学の本や、フロマーの旅行ガイドブックシリーズのような旅行書は、それらについて読み始めるのに、良い本だと言えるでしょう。

融合、文化的配慮および、職場文化

外国で、医学留学生がうまく環境に溶け込む事は、困難です。それが出来るか否は、新しいホストカントリーで、あなたとあなたの周囲の人たちを取り巻く多くの要素次第だといえます。その内のいくつかは、あなたがコントロール出来るでしょうが、その他は制御不能です。あなたがコントロール出来るであろう事の一つには、文化的配慮があり、それはホストカントリーであなたが溶け込めるかどうかの、重要な要素です。

文化的配慮とは、人と人の間には文化の違いが存在すると言う事に気づき、どの人に対しても肯定的、もしくは否定的な評価を割り当てないことです。あなたが海外に医学留学をしている間、文化的な配慮をする事は、同僚間での協力性の改善や、互いを受け入れるために役立つだけでなく、医療チーム内での目的と目標に対する共通認識を生んだり、患者の文化的背景に考慮したケアを提供するなど、多くの理由で有益であると言えます。

文化的配慮がどれだけ重要だったかを、どのように説明すれば理解してもらえるか、分かりません。私は文化の違う外国で働いていただけではなく、職場文化も新しく、職場仲間の大半も、新しいものだったのです。事実、私のいたチームのほとんどはインドや、韓国、そして南アフリカからの医学留学生で構成されていました。さらには、私の患者の多くは、歴史的には私のアフロ・ラテン系の背景に似ていましたが、彼らは厳しいニューヨーク州のブルックリン区でタフに生きてきており、文化的に見ても私とは全く異なっていました。

これらの結果、受容と配慮を必要とする、多様な環境が作られましたが、それはいつも簡単にそうなったわけではありません。異なる社会的文化を持つ人々をケアしたり、その人達と共に働くことは難しく、私は患者や同僚のニーズや期待を真に理解することが出来ないこともありました。文化的な配慮が出来る人になりたいと思うことと、それを完璧に実行することはまた別のことでした。ヒポクラテスの誓いとは裏腹に、私たちは皆単なる人間であって、完璧ではありません。もし同僚や患者が自分に失礼な態度をとったら、その相手を尊重することを難しく感じる時もあるでしょう。しかし私たちは皆、互いの文化に配慮を示す努力をするべきで、それは他人の気持ちを理解することのように、受容する心は育む事ができます。

文化の違いを尊重し、違いに対し寛容になれば、あなたと他の人との間の溝を埋める大きな成果が見られるでしょう。そして他の人の気持ちや行動をコントロールすることは不可能であっても、相手に不信感や批判ではなく、共感と優しさを示せば、ほとんどの場合、相手に受け入れてもらえるでしょう。

私からのアドバイス: 文化的に配慮ができるように、小さなことから努力してください。新しい体験をすることにオープンになってください。それは音楽や、アート、食べ物やそのほか、何でもいいのです。例えば、 私はクンビアや、バチャータなどのラテンアメリカ系の音楽を聞きながら育ちました。ですがアメリカ渡航直前は、アメリカンスタイルの生活に浸かり始めるため、ブルースやジャズ、ソウルミュージックやカントリーミュージックなどを調べて、聞いてみました。同様に、ニューヨーク到着後は、色んなレストランで食事をし、異なる文化の味や香りを理解しようとしました。最後に、医療に関連するものでいうと、異文化でどのような療養法が一般的であるか、そういった感覚を磨くため、体験したことのない療養法(例えば鍼治療や指圧など)を試してみました。それにより、もしそういう背景を持つ患者が病院に来たら、彼らの国で古くから使われている療養法について、少しは把握し、理解することができると思えたのです。

研究と出版

メディカルスクールに在籍中の研究成果は、レジデンシーの申請時や、プロフェッショナルとしてのあなたのキャリアパスにとって、しばしば重要な要素となります。研究は医学分野における、あなたのモチベーションや興味を示します。あなたが医大生であろうが、医師として働いていようが、好機を逃さないようにしましょう。

もし現在学生であれば、医学部や理学部に行き、掲示物を見たり、そこに所属する学生に何か良い募集がないか聞いてみましょう。同様に、もし現在外国で働いているのであれば、ボランティアで参加するチャンスなどがないか、同僚に尋ねてみましょう。あなたの病院でそういった機会がない場合でも、地元の病院で空きの時間を使ってボランティアできるインターンシップがないか、探してみましょう。

役に立つ知識を蓄える以外に、医療研究助手の仕事は更なる利点があります。研究訓練の間、研究医とはどのようなものか、またあなたの真の興味が何かを突き詰めて知ることができます。事実、私が母国でがんの研究をしていた事が、私が現在医師として持っている目標を形成することに役立ちました。 そしてその目標が、ニューヨーク市のメモリアルスローンケタリングがんセンターで、引き続き学びたいと思わせてくれたのです。

医学生の時に医療研究をする、もう一つの重要な利点は、主任研究者や、大学院生からの指導を受けられることです。私の場合、がん研究の際に恩師から受けた指導は、私の医学を批判的に評価するスキルや、臨床のスキルを成長させてくれただけでなく、自分の成長は努力によって向上出来るという信念を、根付けてくれました。さらには、研究の恩師が、推薦状を書くことになる可能性が高く、これはレジデンシープログラムや修士過程プログラムに応募する際に、非常に価値のある物となるでしょう。

では、どこから始めたらよいでしょうか?初めの一歩は、あなたが心から興味を持てる研究プロジェクトに関わることです。例えば、参考資料を見つけて、研究プロジェクトのアイデアのための情報収集をしましょう。今のあなたの知識や受けた教育・研修レベルにふさわしい、現実的なアイデアを考えましょう。

研究プロジェクトに適した教授にスポンサー(研究顧問)になってもらい、真に期待できる実行可能な研究プロジェクトを立ち上げましょう。あなたの学業における負担や、臨床活動、そして講師やアドバイザー、クラスメイトとの共同研究の可能性も考えてみましょう。

私からのアドバイス:研究が終わり、研究成果が出版されても、まだそこで終わりではありません。あなたの研究分野の学会や会議に参加して、あなたの経験と知識を共有する努力をしましょう。学会に参加することで、プレゼンテーションスキルを伸ばし、参加者からの研究においてのフィードバックも貰え、ネットワークも広がるでしょう。自分としては、尊敬している病院などはFacebookやLinkedInでフォローしていますし、Meetup.comで公衆衛生学関連のイベントを調べたりしています。

キャリアの見通し

留学を終えた後、あなたは自分のキャリアをそこからどうやって進めていくかについて、様々な可能性が出てくることに気づくでしょう。多くの医学留学生は、卒業後母国に帰りますが、海外でキャリアを積む人もいます。それはあなたの経済的事情や、キャリアに対するモチベーション、個人的な趣向により、選ぶ道が変わってきます。

もし母国に帰る場合は、感情的、心理的苦痛を特徴とする、逆カルチャーショックを感じるかもしれません。これはごく自然な事で、自分の国の文化に再度適応するためには、やる気と時間が必要です。私もコロンビアに帰国後、再び、コロンビアの流儀に自身を適応させるために、数週間を要しました。家族や友人に会うことは助けにはなりましたが、多忙に身を任せ、時が経つのを待つことが、一番効果的でした。

あなたの地元の人たちは、留学生活がどうだったか聞いてくるでしょうが、彼らがあなたの経験したことを、あなたと同じレベルで感動したり、心の底から理解することは出来ません。彼らは、あなたのように、数か月から1年かけてこの経験をそこまで面白くしたことを体験していないのですから。もし、彼らに話を聞かせて、あなたが期待するような反応を示さなくても、落ち込む必要はありません。

さらに、あなたが留学を通じて手に入れた、新たな心構えや個人的な目標は、帰国後も維持することをお勧めします。あなたが外国で身を置いた環境を、自国でそのまま再現する事はできませんが、外国で学んだすべての良い教訓を、帰国後も引き続き維持し、成長させることは可能です。私は自分の外国での経験を日記に書くことが好きで、帰国後もそれらを振り返るのに役立てています。それらの教訓は忘れがちですが、日記に書くことで、心に留めておくのに役立ちます。

他に覚えておくべきこととして、もしあなたが留学後に帰国する予定であれば、多くの国では外国で訓練された医師に対し、帰国後、自国の医師免許を取得するために、外国で取得した医大の卒業証明書と成績証明書の認定が必要になります。後で知らなかったとならないために、その事を念頭に置いておきましょう。ぜひ、帰国前に必要な書類の送付を始めましょう。そうすれば、早めにプロセスに取り掛かることができます。

もしあなたが外国で有意義な時間を過ごしたのであれば、大学院で勉強したり、外国で働いてみたり、ボランティアをする事もオプションの一つとして考えてみてください。常にもっと学ぶ事はありますし、それを新たな困難な環境で行う事は、あなたが物事を学ぶための可能性を大きく広げる、素晴らしいチャンスです。

私からのアドバイス:医学留学や、外国で医療の仕事に就くことに正解、不正解はありません。発展途上国での公衆衛生の研究から、先進国でのがん研究のフェローシップまで、可能性は無限です。何があなたを最も幸福にしてくれるか、長い目で見てあなたにとっての一番いい道は何かによって、あなたの判断は違ってくるでしょう。私は長い間、米国の内科でレジデントとして働きたいと思っていました。そして今、私はその最初のステップの準備をしています。米国で内科のレジデンシーを終えた後、腫瘍学のフェローシップを探す予定です。

まとめ

医学留学は、新たなレベルでのグローバル的、文化的な理解を可能にします。それにより、医学生は多様な患者の最善なケアや、文化を超えた効果的なコミュニケーションが出来るようになるでしょう。最終的には、一人の医師として、異文化の患者を理解し、彼らとうまくコミュニケーションをとりつつ、患者に共感と尊重の気持ちを持ちながら診療できる人間になれるでしょう。

医学留学は、必ずあなたの生活を豊かにする経験となり、価値のあるものとなるでしょう。後悔は絶対にしないはずです。絶対に!

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Carolina Severiche Mena MD は、研究者、著者、フリー―ランスのライターです。

現在、同僚とゲノミクスの共同研究をしています。過去には、血液腫瘍のある患者の死亡リスクや、乳がん固有のサブタイプの分類について研究していました。

著書には、Paciente Oncológico En Cuidados Intensivos (スペイン語で出版)があり、重篤な腫瘍患者は、特有の脆弱性と、治療の複雑さという、医学的に難しい課題についてどのように主張しているかについて、述べています。その他に、ツイッター(Twitter account)や、自身のブログ(medical blog)を頻繁に更新しており、 コロンビア出身の医師として、米国で研修医としての就職先を見つけるための挑戦について、発信しています。