高密度焦点式超音波(HIFU)に寄せられるがん治療戦略上の大きな期待

高密度焦点敷超音波 (HIFU)は、高周波の超音波を対象に当てることで、体の深層部に存在する固形腫瘍を除去することができる非侵襲的な医療処置で針や電気を使用せず、手術の必要もありません。HIFUを用いる事で、超音波が皮膚やその他の組織を傷つけることなく安全に通過します。 

本ブログでは、とりわけ最近の研究に見られる「HIFU」に関する重要な背景原理とその種類、メリットデメリット、現在のがん治療への応用方法、さらにHIFUによる免疫療法改善方法ついて解説していきます。 

 

HIFUの仕組み 

HIFUは、腫瘍塊の近傍に放出する波を発生させる超音波トランスデューサーを使用しますその際、施術をガイドし、治療結果を即座に評価するためのモニタリングシステムも必要になります

HIFUの 

HIFUには2つの種類が存在し、それらは、トランスデューサーが腫瘍に超音波を放出する方法によって区別されます。

  • サーマルHIFUT-HIFU)は、トランスデューサーが腫瘍塊対して継続的に超音波を放出し続けますT-HIFUは、数ミリの焦点の温度を60℃/140°F以上にまで上昇させることができこの高温により、急速な(1秒以内の)細胞死(ネクローシス)を誘発させることができます。 
  • 機械的HIFUM-HIFU)では、トランスデューサーが腫瘍塊対して急速なパルス超音波を放ちます。M-HIFUを使用すると、細胞膜を損傷させ、核DNAを分解する高圧の微小電流が形成されますM-HIFUは即座にネクローシスを誘発させるのではなく、遅れて進行する細胞死(アポトーシス)を誘発します 

HIFUのモニタリング 

HIFUを実施する前に、臨床医は焦点となる部分に正確に超音波を当てるために腫瘍塊を可視化する必要があります。治療中は、組織の構造状態や温度をモニターすることが重要であり、治療終了、腫瘍が除去されており、周囲の健康な組織にダメージがないことを確認する必要があります。

HIFUをモニターするために、臨床医は主に磁気共鳴画像(MRI)または超音波画像(UI)を使用します。

磁気共鳴画像法(MRI: Magnetic Resonance Imaging)

メリット  

  • 優れた焦点領域の解像度を持つ 
  • 腫瘍の位置高感度な局在化が可能である
  • 焦点領域の正確な温度制御が可能である

デメリット  

  • 高価である
  • 大規模なユーザートレーニングが必要である
  • 焦点領域の周囲の温度過小推定される可能性がある 

超音波画像(UI: Ultrasound imaging) 

メリット  

  • MRIより安価である
  • 最小限のユーザートレーニング施術できる
  • 治療に使用するエネルギーと同じエネルギーでリアルタイムに対象の局在化が可能である(超音波検査)
  • HIFUの効果を予測する診断法として使用できる

デメリット  

  • MRIより画像の解像度が低い
  • 治療後に目的部位を可視化できない

 

HIFUと従来の超音波検査との違い 

HIFUと従来の超音波検査は、どちらも超音波を使用する点共通していますが技術的にいくつかの点で異なります。 

利用される超音波 

従来の超音波検査は、低周波の超音波(0.1W/ cm2)を用いて、組織や臓器、異常な塊(腫瘍など)の外観を評価し、定型的な検査や特定の疾患の診断に用いる画像技術で。一方、HIFU治療用のより高い周波数の超音波(10010,000W/ cm2)を使用し、焦点に向かって直接膨大なエネルギーを発生させます。

侵襲性の程度 

従来の超音波検査は、皮膚に直接体外トランスデューサーを当てるだけ常に非侵襲的な検査です一方で、HIFUでは体内トランスデューサ必要とする場合があり一般にこの処置は無痛ではあるものの、軽度の不快感を伴う場合があります。

副作用 

従来の超音波検査では、皮膚への圧迫感などの副作用ほとんどありませんでした。HIFUもまた副作用が少ないことが特徴すが、処置の長さ治療された組織への損傷可能性結びつく恐れがあります。

 

HIFUのがんへの応用 

HIFUはすでに多くの種類の固形腫瘍対して効果的に使用されています。以下に、研究が行われているがんの種類列挙しています。

さまざまな種類のがんに対して、HIFUの単独療法または他の治療法との併用療法を用いた臨床試験がいくつか進行しています。(進行中の臨床試験の概要はこちらでご覧いただけます)。

 

HIFUのメリットとデメリット 

HIFUのメリット 

  • 皮膚や周辺組織を傷つけることなく、焦点に正確にエネルギーを供給できる
  • 非侵襲的で痛みが少ない
  • リアルタイムの可視化およびモニタリングが可能 
  • 固形腫瘍の腫瘤に対して高い効果を発揮する 
  • 線量限度が無い 
  • 低コストでシステムメンテナンスが可能 
  • 麻酔を必要としない 
  • 電離放射線を必要としない 
  • 感染症リスクが低い 
  • 傷跡が残らない  

HIFUの可能性をいかすための新たなアプローチ 

  • 腫瘍の大きさによっては、全治療に数時間を要することがあ
  • 患者動きHIFUの正しい使用とモニタリングの妨げになることがあ
  • 部位によっては、体外式トランスデューサーの使用により、近接した組織火傷や主要な血管からの出血などの損傷が生じることがある
  • 前立腺がん治療中インポテンツや失禁のおそれがあるHe et al.2020を参照)
  • HIFUのポテンシャルwp引き出す、新しいアプローチ  

HIFUのメリットとデメリット

HIFU療法以外にも、免疫療法はさまざまながんの治療で有望な結果を示しており、標準的ながん治療における重要な方法1なっていますしかし、免疫療法対して全ての患者やがん種が同様の反応を示すわけではなく、また、治療法によって引き起こされる恐れのある副作用も異なります 

また、腫瘍微小環境(TME)に対しては、免疫療法は非常に免疫抑制的であるため、現在利用可能ながん免疫療法の臨床効果依然として芳しくありません。がん細胞は現状の治療法に対する防御手段としてTMEを利用するため、TMEは治療における絶好の標的なっているのでXiao et al.2020参照)。Eranki et al. (2020)は、HIFUが免疫療法の結果を改善する上で大きな期待を示していることを説明しています

Abe et al. (2022)の研究においてはデューク大学メディカルセンターに所属する研究者が、がん細胞とTMEの両方を標的とするM-HIFUと免疫療法を組み合わせた新しい治療戦略を報告しています。

彼らは、M-HIFUTMEをより効率的にリモデリングすることを実証しました。実際、M1腫瘍関連マクロファージ(TAM)の再極性化、腫瘍部位におけるCD8+ T細胞およびナチュラルキラー(NK浸潤において改善が見られましたM-HIFUによるTMEの物理的変化は、免疫療法と組み合わせることで最高の治療効果を発揮することを示したのです

また、熱ストレスによって焦点の周囲で不要な細胞死を引き起こす可能性のあるT-HIFUの代わりにM-HIFUを使用する利点について報告されています

 

類似の非侵襲的がん治療法および新たな治療法 

HIFUの他にも(そして免疫療法の他にも)、がん治療をサポートするために、最小限の、あるいは非侵襲的な治療戦略が現在使用されています。以下参照

  • 温熱療法凍結療法:高温または低温を利用して腫瘍組織を消滅させる
  • ラジオ波焼灼療法(RFA高周波電流を用いて小さな腫瘍塊を消滅させる 
  • 遺伝子治療がんを発生させる遺伝子proto-oncogenesを不活性化したり、がん抑制遺伝子を回復させたりすることを目的としたさまざまな戦略やツールの集合体
  • 食事療法通常、がんの予防のためにのみ考慮される食事は、腫瘍の種類によっては化学療法のアプローチをサポートすることができる

腸内細菌叢の変容:細菌叢は、免疫療法に関連する部分と食事に関連する部分があ、腸内免疫系の重要な構成要素である。がんに罹患すると、患者腸内細菌叢申告な変遷もたらすdysbiosis。正常な腸内細菌叢を再確立することで、がん治療の効果を向上させることができ 

 

HIFUのまとめと展望 

がんは、治療効果や生活の質を向上させるために様々な戦略が必要となる複雑な疾患です他の治療法ともにHIFUはがん治療をサポートするための魅力的な技術であるといえますHIFUは、上述したように考えられる限界やデメリットが存在するものの、他のがん治療と比較して患者の不快感を最小限に抑えることのできる非侵襲的な治療戦略です

HIFUは、病期やがん細胞の遺伝的特徴とは無関係に、さまざまな固形がんに対して効果的に使用されます。HIFUの幅広い適用範囲のおかげで、そのの従来のがん治療と組み合わせることにより薬剤の投与量、再治療、治療期間、および関連する副作用を減らすことも可能です。 

がん治療への適用に対する期待が高まり応用例増加しているHIFUですが、最初研究が行われたのは1989年と比較的新しく、実装されるようになったのもつい最近であるなど、今後の成長に期待のかかる技術です。の記事で紹介したような研究によって治療法や治療戦略が改善されることで、HIFU効果を高めつつ、その限界や起こり得るデメリットを克服すること期待がかかります。

 


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Author bios 

Ernesto Gargiulo, PhD, was the main author of this post. Ernesto works as a postdoctoral researcher at Rigshospitalet Copenhagen University Hospital in Denmark. His research focuses on cancer, immunology, extracellular vesicles, and the tumor microenvironment. In addition to his research work, Ernesto is passionate about science communication and writing. 

Adam Goulston, PsyD, MBA, MS, MISD, ELS, planned and edited this post. Adam is a US-born, Japan-based science copywriter, editor, and marketer. He is a former in-house Senior Language Editor at Edanz and operates the scientific media company.