Abstract Tips!
大半の読者は、論文のアブストラクトを読むことで、自分の研究との関連性の有無や、論文の全文をダウンロードするかどうか(有料の場合があります)を判断します。編集スタッフまたは編集委員がアブストラクトのみを見て査読へ進めるかどうかを決めるジャーナルもあります。そのため、アブストラクトでは研究の質の高さや、最も大切な発見・結論を示す必要があります。アブストラクトは以下の条件を満たしていなければなりません:
- 明瞭、簡潔、正確であること。
- 読者が理解しやすいよう、知られていない略語・専門用語を避けていること。略語は通常、アブストラクト内で三度以上使われている場合のみ、最初に定義してから使用します。
- 本文や図表を参照せず、アブストラクトのみを読んで理解できること。
- 図表を含まないこと。ただし「図によるアブストラクト(グラフィカルアブストラクト)」を求めるジャーナルもあります。
- 参考文献を引用していないこと。ただしこれが認められている場合もあり、その場合は通常、参考文献は脚注ではなくアブストラクトの本文内に記載します。
- キーワードをいくつか含んでいること。
早い段階で仮のアブストラクトを書いてみると、論文の構成や自分が伝えたいメッセージを固めるのに役立つことがあります。その場合、最後にもう一度ブラッシュアップします。アブストラクトの文字数制限、フォーマット、スタイルについては、目標ジャーナルの投稿規定を確認します。アブストラクトのフォーマットにはBackground(背景)、Methods(方法)、Results(結果)、Conclusions(結論)といった見出しや小見出しをつける必要がある構造的アブストラクト(structured abstract)と、1、2段落のみで小見出しがない非構造的アブストラクト(unstructured abstract)があります。
どのようなフォーマットであっても、アブストラクトには以下の4つの問いへの回答を含めます:
- なぜこの研究を行ったのか。
- 研究の具体的な目的・課題や用いた主な手法は何か。
- 主な発見は何か。
- その発見が役に立ち、重要である理由は何か。
ジャーナル独自の指定に関しては目標ジャーナルの投稿規定を確認します。以下はジャーナルごとに確認すべき項目の一例です。
- 論文の種類によってアブストラクトのスタイルが違うかどうか。
- 専門的な用語は避けるべきか。それとも、専門用語を使わないアブストラクトを別途準備すべきか。
- トピック、目的、そして論文内容の概要を記述する概論的スタイルなのか、または結果や結論も含むより具体的なスタイルなのか。
- 結果を述べる際には主なデータや統計も示すことになっているか。
- その他の情報(例:限界や研究が示唆しうる点)を足す必要があるか。
- 使用する動詞は受動態のみか、あるいは能動態・受動態の両方が認められているか。また、使用する時制についての指定はあるか。
アブストラクトの例
Background(背景)
The placement of medical research news on a newspaper’s front page is intended to gain the public’s attention, so it is important to understand the source of the news in terms of research maturity and evidence level.
説明:このジャーナルでは構造的アブストラクトが要求されているため、小見出しが使われています。著者はほぼ能動態を使っています。 Backgroundでは、研究の元となった主な疑問が提示されます。
Methodology/Principal Findings(方法/主な発見)
We searched LexisNexis to identify medical research reported on front pages of major newspapers published from January 1, 2000 to December 31, 2002. We used MEDLINE and Google Scholar to find journal articles corresponding to the research, and determined their evidence level.
Of 734 front-page medical research stories identified, 417 (57%) referred to mature research published in peer-reviewed journals. The remaining 317 stories referred to preliminary findings presented at scientific or press meetings; 144 (45%) of those stories mentioned studies that later matured (i.e. were published in journals within 3 years after news coverage). The evidence-level distribution of the 515 journal articles quoted in news stories reporting on mature research (3% level I, 21% level II, 42% level III, 4% level IV, and 31% level V) differed from that of the 170 reports of preliminary research that later matured (1%, 19%, 35%, 12%, and 33%, respectively; chi-square test, P = .0009). No news stories indicated evidence level. Fewer than 1 in 5 news stories reporting preliminary findings acknowledged the preliminary nature of their content.
説明:このアブストラクトでは方法(Methods)と結果(Results)が同じセクションにまとめられています。方法について述べた部分は非常に短く、結果についての記述が大半を占めています。これは、読者の最大の関心がこの研究で分かった結果にあるためです。結果の部分では一般的な事実からより具体的な事実という順序で事実が示されており、主要データも提示されています。研究や分析は終了しているため、時制は過去形が使われています。しかし、理論的研究やモデリング研究では、アブストラクト全文を通じて現在形が頻繁に使用されます。
Conclusions/Significance(結論/重要性)
Only 57% of front-page stories reporting on medical research are based on mature research, which tends to have a higher evidence level than research with preliminary findings. Medical research news should be clearly referenced and state the evidence level and limitations to inform the public of the maturity and quality of the source.
説明:このセクションでは、何よりもまず主な結論を示す必要があります。このジャーナルでは、発見から示唆されうる点についても述べることが求められています。
おわりに
経験豊富なエダンズのエキスパートによるこれらのヒントを参考にして、読者を惹きつけるアブストラクト作成に挑戦してみてください!
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