研究成果が出てから、出版を目指し、論文の執筆を開始することは容易ではありません。そのような場合は、先ず最初にアウトラインを作成することで、進むべき道筋がはっきりしてきます。たとえ議論したい内容の大まかなアイデアがあっても、それを書き出し、どの裏付け情報を含ませ、また何を省くべきかを決めることは大変な作業です。 また、明確なガイドラインなしには、必ずと言っていいほどライターズブロックに陥るでしょう。しかしアウトラインがあれば、そのような事態を未然に防ぐことが可能です。
アウトラインには、簡単なものと、(簡単なものを)拡大したものの2種類があります。ここでは、その両方の書き方についてご紹介します。
論文の簡単なアウトライン
アウトライン作成は、研究者にとって物事を容易に進めるのに役立ちます。したがって、先ずはじめに、論文に含めたい主な項目を箇条書きにすることから開始します。 この手法を、「ブリーフ・アウトライン(brief outline)」と呼びます。IMRaD構造 の基本形を用いて、そこに肉付けをしていきます。次の例を参考にしてください。
Introduction
- Introduce that stress-related diseases are a major contributor to health problems in home-based caregivers
- Discuss that epidemiological data on the stressors leading to these diseases are limited
- Describe previous studies that have attempted to identify lifestyle factors that might contribute to the development of the diseases
- Discuss the lack of information on work-related stressors and that these may go under-reported
- Identify suspected causes of workplace stress
- State the aim of the study, which was to determine the workplace factors associated with increased stress-related diseases in home-based caregivers
Patients & Methods
- Describe the study population, including the eligibility criteria for enrollment
- …
長く書く必要はありません。目的は、論文に書きたい内容を、短く要点を絞って書くことです。
先に挙げた例では、主な論点や引用が必要な箇所に触れつつ、イントロダクションのアウトラインをどのように作成するか見ていただきました。その後に続く各セクションも、同じ要領で進めていきます。
例えば、メソッド・セクション(方法、Methods) において、研究を行うためにどの方法を用いたのか、統計分析を行ったか、患者は登録されたか等の項目を用いると、それらの項目は、論文の全体的な構造を構築するための、良い原点になります。
結果についてはどうでしょうか? 研究の最初の段階で、すでに目的や仮説がありましたが、その目的に関して、どのような結果を議論することが最も重要か考えます。
考察(ディスカッション、Discussion)では、結果を裏付けたり、逆に矛盾を示すような関連した研究についてどう述べていくか、また、 結果に見受けられるパターンや要因は、さらに詳しく議論する価値があるかを見極めます。 議論する価値のあると思うものは、例え多過ぎると思っても、心配せずすべて箇条書きにします。アウトライン作成の良い点は、論文の構造を基本的な形で視覚化することで、本格的に執筆に入る前に、論点の再構成や、項目の削除が簡単にできることです。
アウトライン作成を終えた時には、30-40程の短い箇条書きになっているかもしれませんが、全く問題ありません。 それらの箇条書きは、単純にこれから書こうとしている論文の、枠組みとなるものだからです。
図(figures)と表(tables)
アウトライン作成のプロセスとして、論文に含める図や表の候補を考えてみます。候補となる図や表は、論文をさらに書き進めていくうち変わる可能性もありますが、論文の本文を完成させるうえで重要な要素です。
また、目標ジャーナルが論文に使用する図表の数に制限を設けている場合、どれを採用するか、難しい決断が必要になるかもしれません。それ故、早い時点で検討をしておくと良いでしょう。
この第一ステップの後、基本的なアウトラインを徐々に発展させて最初のドラフトの形にします。その後は、修正を加えていき、最終的なドラフトができたら、論理と言語を上司や同僚、信頼できる専門の会社にチェックしてもらいましょう。
論文の拡大したアウトライン
拡大したアウトラインの目的は、 最初に作成した簡単なアウトラインであげたポイントをさらに拡大し、詳細や関連する参考文献のリンクを追加したり、アイデア間の移行を可能にして、さらに長いアウトラインに仕上げることです。 このプロセスは最終段階でもあり、この段階でもし気に入らないと思ったら、構成を変更することも可能です。 完全なドラフトを書き始める時には、すでに主要な構成や内容の成分はすべてまとまっているので、この手法がいかに効率的かお分かりいただけると思います。
それぞれの箇条書きを完全な文章にし、さらなる箇条書きを追加して、小見出しを作成します。アウトラインは出来るだけ論文の完成形に近い形で、かつポイント形式で作成します。 例えば、方法(Methods)のセクションは、このような形になります。
まだ、読者が必要とする詳細は少なめですが、箇条書きの内容はかなり具体的で、論文にする際の表現に近くなってきました。 こうして内容を充実させていくと、どこが重要か、どの文章が不要かなど、論文が最終的にどのようにまとまるのかが見えてくるはずです。
主な利点
- 論文がどのくらいの長さになるか目安が分かる。多くのジャーナルは投稿論文の長さに制限を設けています。そのため、論文を完成させる前に拡大したアウトラインがジャーナルの制限に近づいている場合は、どこを削るかを検討する必要があるかもしれません。
- 参考文献の整理が容易になる。参考文献を本文のコメント欄に残しておくことで(上の図を参照)、参考文献リストの更新をいちいち気にせずに、好きなだけ資料の並べ替えが出来ます。
- 図・表を洗練させる。アウトラインを拡大することで、どの図や表が必要かが分かり、不要なものを削ったり、逆に新たに必要なものがあると気づくかもしれません。
拡大したアウトラインを共著者に承認してもらい、必要なアレンジをすべて行ったら、いよいよドラフトの作成に取りかかります。
ところで、研究者から「アウトラインと論文の違いは何か」と聞かれることがあります。実は、これら2つは全くの別物で、アウトラインが骨格だとすると、論文は体(全身)そのものです。骨格から作り始め、骨に肉付けし、命を吹き込めば良いのです。ぜひこの方法を使って、たくさん書く事で、より多く出版するチャンスをつかんでください!
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