フローチャートとは何か
フローチャート(流れ図、フローダイアグラムとも呼ばれています)は、通常システマティックレビューの結果の章で最初に目にする図です。
この図は、レビューのトピックに関して公表されているデータを特定すレビュアーのプロセスと、それをレビューに含めるかの決定方法を、視覚的に描いてます。読者は、あなたがスクリーニングした研究の数や実際にレビューに組み入れた数、設定した除外基準を、一目で確認することができます。
フローチャートの4つのステージ
フローチャート内の手順は、4つのステージに分けることができます。
- (1) 論文を特定する(Identification)
- (2) 論文をスクリーニングする(Screening)
- (3) 研究の適格性の判断(Eligibility)
- (4) システマティックレビューに組み入れる研究のリストの完成(Inclusion)
(1) Identification – 論文を特定する
この最初のステージでは、あなたが選択した、データベース(例:, PubMed、Scopus)を使いアブストラクトおよび引用の検索をします。検索結果が何件だったか、記録しておきます。Google Scholar などの他のソースから検出した結果や関連する論文の参考文献リストも追加することが出来ます。
注意: それぞれのデータベースには、目的に適うキーワードの設定方法や、効率良く検索するためのキーワードの組み合わせに関する特定のガイドラインがあります。従って、データベースによって検索方法に多少の違いがあります。例えば、PubMed の検索機能は文字に忠実で、もしタイトルに「rat」があるものを検索すると、タイトルに「rats」があるものは検索結果に入りません。
データベースの検索を実行し、その他のソースから見極めた記録を追加した後、検索から得たすべての結果を1つの引用管理ソフトにまとめます。DistillerSR、EndNote, Sciwheel、Mendeley、ZoteroもしくはMicrosoft Excelを使うことが出来ます。
次に、重複している記録を除外します。例えばExcelで、「データ」タブをクリックし、「重複の削除」を選択します。その際、どの識別子(列の見出し)の重複を削除するか聞かれます。 PubMedのPMID 、もしくは論文のデジタルオブジェクト識別子(DOI)などの独自のものを選ぶのと良いでしょう。
同じタイトルの論文が2つあった場合、タイトルで重複を削除すると、本来有効で重要なソースを失うかもしれません。重複分を削除後、残った論文の数を記録しましょう。
(2) Screening – 論文をスクリーニングする
2番目のステージでは、レビュー実施者の1人が各記録のタイトルとアブストラクトを読み、システマティックレビューに関連するか役に立つ内容を含んでいるか判断します。
これは単に「はい/いいえ」で選択します。もしその論文を除外すると決めたなら、必ず除外理由を記録します。論文を除外する理由は、通常、「固有のデータのないレビュー論文」や「対照が設定されてない」、「リサーチクエスチョンと結果に関連性がない」、「見解を述べただけのopinion piece」、もしくは「誤った母集団/設定/介入法」です。除外した論文の数と、同じ除外理由で除外した論文の数を、それぞれ記録しましょう。
いくつかのケースでは、2人でタイトルとアブストラクトをスクリーニングをします。彼らは、作業を分担するわけではありません!それぞれがすべてのタイトルとアブストラクトをスクリーニングし、互いに判断を比較するのです。もし1人がある論文を除外し、もう1人が含めるべきと思った場合は、 彼らは一緒に全文を確認することで、同じ結論にたどり着くようにします。もしくは3人目(通常、プロジェクトマネージャーまたは責任医師)に頼み、研究を含めるか決断してもらいます。
除外したレビュー論文には、検索結果には反映されなものの、役立つ研究が引用されているかもしれません。その場合「additional records」として「上積み」する研究を追加することができます。
注意:時に、1つの論文に対し、2つの除外理由がある場合があります。その場合は、最も適した理由を注意深く選択しましょう。例えば、多くのフローチャートに「英語以外で書かれた論文」の除外基準が記されています。もし検索結果に1つの論文が挙がり、あなたはその論文の言語が読めない場合、その論文はシステマティックレビューのトピックに関連しているか自問しましょう。もし関連していれば、「論文は『読解可能な言語』で書かれてない」が正しい除外理由です。しかし、論文のトピックがシステマティックレビューに関連していない場合は、除外理由は「リサーチクエスチョンもしくは結果に関連していない」を選択するべきです。
(3) Eligibility – 研究の適格性を判断する
3番目のステージは、タイトルとアブストラクトによるスクリーニング後の残りの論文の全文を読み、それらがあなたのリサーチクエスチョンに回答するのに有用か見極めます。
この全文読解によるスクリーニングは、2人で実施されます。それぞれがすべての論文の全文を読み、「組み入れる/除外する」を決めます。タイトルとアブストラクトの審査のように、全文のスクリーニングにおいても除外した論文の数と、それぞれの除外理由で除外された論文の数を記録します。
ここでも、2人が1つの論文に対し、含めるか除外するかで意見が分かれた場合、話し合うか、3人目のレビュー実施者に論文を読んでもらい、決定します。
(4) Inclusion – システマティックレビューに含める研究のリストを完成させる
全文のスクリーニングで関連のない研究を除外した後、システマティックレビューに含める研究の数が判明するので、それをフローチャートに記載します。
スクリーニングの最後となる4つ目のステージでは、「メタアナリシス」とも呼ばれる定量的統合に含めるかを決定します。システマティックレビューの選択基準に合致した研究すべてがメタアナリシスにも適格とは限りません。 メタアナリシスは、複数の研究からデータを蓄積して仮説を検証する統計解析です。すべての研究に定量的統合に必要なデータが含まれるわけではありません。フローチャートの最後(一番下)の欄に、メタアナリシスの数を書きましょう。
最後に
フローチャートは、Microsoft PowerPoint、ExcelやVisioなどのソフトウェアを使って簡単に作成することが出来ます。オンラインの無料のフローチャート作成用ソフトもあります。
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Dr Dean Meyerは、環境科学のバックグラウンドを持ち、毒性学と公衆衛生学を専門としています。博士研究は、無脊椎動物モデルにおける金属解毒の分子メカニズムにフォーカスしました。その他の研究には、毒性のメカニズムと疾患の原因、職業に由来する外因性化学物質およびその生理学的影響があります。
Dr Meyerは、米国アトランタにある、疾病予防管理センター[Centers for Disease Control and Prevention(CDC)]で8年間勤務し、研究所の安全性と環境衛生に関する幅広い経験を有します。有資格のライフサイエンスエディター[Editor in the Life Sciences(ELS)]として2015年からEdanz Groupで活躍中です。