読む論文を決定するには、多大な時間がかかると思うかもしれません。特に、興味があるのが、すでに確立された研究分野であればなおさらでしょう。 実際、オンラインデータベースのEconLit、PsycInfo、PubMed、SCOPUSや Web of Science 等にキーワードを入れて検索をすると、何百、何千という検索結果が表示されます。このような中で、適切な文献を見つけるヒントをご紹介します。
総説論文(REVIEW ARTICLES)から読む
研究者の方で、キャリアがまだ浅い場合は、あるトピックについて、既に発表されている論文の研究や概要を総合的にまとめた総説論文(英語ではreview articles、secondary research articlesなどと呼ばれる)から読むのがおすすめです。また、総説論文から、読んでおくべき重要な研究の原著論文も特定することができます。
専門分野以外の文献も読む
既にキャリアがある研究者の方は、重要な論文は既にご存じでしょう。そこで、より新しい文献を探したり、他の領域で内容が重なる文献も読んでおきたいものです。例えば、ソーシャルメディアの研究者であれば、心理学や社会学のジャーナルを読むのと同時に、マスメディアやコミュニケーションの分野でも関連する文献があるでしょう。
検索に磨きをかける
比較的新しい分野(最先端技術に関連する分野など)の研究者は 、厳密にその分野について書かれた文献を見つけるのが難しいこともあるでしょう。 その解決には、入力する検索ワードの工夫や、より広い範囲で、独創性を働かせてデータベースを検索する必要があります。また、ブール論理(AND, OR, NOT)を使いながら、さまざまなキーワードの組み合わせで検索してみるとよいでしょう。適切なストラテジーとプラクティスで重要な文献を素早く抽出できれば、研究分野に関する話題や最新情報を常時入手できます。
実験(オリジナル)に基づいた研究論文(原著論文)を読む際、本を読むように最初から最後まで読むのが理にかなっていると思うかもしれません。しかし、読むスピードがよほど早ければ別ですが、このアプローチは非常に時間がかかります。一般的な論文は、タイトルと著者に関する情報→アブストラクト→イントロダクション→メソッド→結論→ディスカッション→リファレンスへと続きます。この構成は、多くのジャーナルで採用されているため、論文を読む際に非常に役立ちます。
読解の時間をセーブするためのヒントです:
- タイトルとアブストラクトを読む—論文のトピックに興味を持ったら、この方法で手早く論文の概要が掴めます。ほとんど場合、アブストラクトに1~2文の背景と目的、方法、と結果、そして結論が記載されています。
- トピックに関する知識を確認する—以前似た論文を読みましたか。専門用語はわかりますか。なぜ仮説が適切か分かりますか。答えが「いいえ」の場合、知識を補うために総説論文(review articles)を読みましょう。
- イントロダクションの最後の段落を読む—通常、イントロダクションのまとめとして、その研究領域の状況と抱える問題、最後に研究目的が記述されます。研究目的は、課題を明確にします。
- 図を見てから結果を読む—通常、図を見ると結果の流れがわかり、ストーリー展開を理解できるので、何が起こったのかを知ることができます。結果のそれぞれのパートは、通常、図の一つ一つと一致しています。
- 考察(ディスカッション)を読み、結果の解釈を掴む—考察(ディスカッション)のセクションは結果を要約し、その妥当性と研究分野への関連性をまとめてます。
上記のストラテジーを使えば、論文から効率よく重要な情報を抽出できます。その上で、必要に応じて論文全体もしくは特定のセクションを詳しく読みましょう。例えば、背景の情報をもっと知りたい場合、イントロダクションを全て読みます。 このセクションには、同じトピックの参考文献が何かという情報もあります。また、研究が実施された方法について詳細を知りたいのであれば、メソッドを読みます。
ただし、コンピュータ、数学、エンジニアリングの論理に関する論文または人文分野の論文の場合、最初から最後までを読む必要があります。通常これらの分野の著者は、論拠を理論的に並べて記述するので、その順番に読む必要があります。
論文を読むとき、ノートを取り、気になる箇所に印をつけるとよいでしょう(PDFファイル上に注釈をつけるなど)。後日その論文を読むときに探している箇所をすぐに見つけられます。