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アブストラクトのスタイルや種類、および特徴について

アブストラクトの目的とは

アブストラクトとは原稿を短く要約したもので、論文の中で実際にはアブストラクトだけしか読まれないということも多いため、論文の投稿や出版を成功に導くには、アブストラクトを周到に準備し、論文の内容を十分に説明することは極めて重要です。
しかし、その長さは100語程度などと大変短いため、著者は、簡潔かつ正確で、しかも読者の興味が湧くように説得力をもって書く方法を身につける必要があります。

また、アブストラクトは読み手を惹きつけ、その読者に論文全体を読みたいと思わせるような、魅力的なものでなければなりません。さらに、アブストラクトの内容は、タイトルやキーワードと併せて、論文の発見の可能性を高めるために極めて重要なものであるため、慎重に準備する必要があります。

構造

アブストラクトの長さは、論文のタイプやジャーナルの要件によって変わりますが、ほとんどの場合は150~300語で、その構造は、次のいずれかに分類されます。

  • 非構造化アブストラクト(単一のパラグラフ)
  • 構造化アブストラクト(目的または背景、方法、結果、結論など、予め決められた小見出し付きのセクションに分割)
  • グラフィカル・アブストラクト(論文の主要な研究結果・メッセージを伝えるひとつの図)※ジャーナルによっては、文章とグラフィックの両方のアブストラクトが求められます。

次の点がわかりやすく書かれているかどうか、他の研究者にアブストラクトを読んでもらいましょう。

  • ナレッジギャップ(未知の領域)
  • 研究の目的
  • 主な研究結果
  • 分野での意義

アブストラクトのスタイル

アブストラクトは通常、過去形で書かれます。特に、目的(aims)、方法(methods)、結果(results)に関する箇所はほぼ過去形です。背景(background)と結論(conclusion)は、多くの場合、現在形で書かれます。また、多くのジャーナルで、能動態と一人称複数代名詞(we)の使用が認められています。

ただし、特定分野のジャーナルでは異なるスタイルが用いられます。特に、化学合成や数学的モデリング、コンピューターモデリングの研究では、全体を通して現在形が用いられることがあります。受動態が用いられることもあり、また「We」の使用は、本文内のみ認められてアブストラクト内では認められないことがあります。

アブストラクトには通常、引用文献や本文中の表や図への参照を含めるべきではなく、独立している必要があります。論文の残りの部分を参照することなく、読み手が内容を理解できるようにする必要があります。したがって、略語や業界用語、専門用語はできるだけ避けてください。どうしても専門用語を使う必要がある場合は、明確に用語の定義を行いましょう。

原稿の構成を考える際に、大まかなアブストラクトや要約を下書きしておく人もいるかもしれません。しかし、共著者全員が原稿の最終的な内容を承認したあとに、最後にアブストラクトを書くことをお勧めします。

以上は論文のアブストラクトについての説明ですが、学会用のアブストラクトの場合は異なります。例えば、学会の主催者によって、参考文献や小さな図表の掲載が認められる場合があります。

記述型 vs 情報提供型

内容

アブストラクトは、その内容によって、記述型(descriptive)か情報提供型(informative)に分かれます。通常、科学論文のアブストラクトは情報提供型で、目的、方法、結果に関する具体的な情報が含まれます。アブストラクトに下記の内容が書かれているかどうかを確認してください。

  • 研究を実施する理由は何か?(現在知られていることは何か、なぜ研究が必要なのか)
  • 目的を達成するため、また仮説を実証するために何を行ったか?
  • 主な研究結果は何だったか?(前述の目的に直接関連するように)
  • 研究結果が意味するもの、含意するもの、その臨床的意義は何か?

アブストラクトは、本文と同じくIMRaD形式で書かれますが、アブストラクトには主要な方法と結果を書くスペースしかありません。したがって考察を書く余地はなく、最終セクションには結論のみを書きます。

生命科学など、分野によってはアブストラクトに小見出しを付けます。これは、「構造化」(structured)形式と呼ばれます。
その他の分野では、アブストラクトの構造化は行いません(小見出しなしで、基本はパラグラフ一つ。ただし、パラグラフが複数の場合もあるので、ジャーナルを確認する必要があります)。

非構造化(unstructured)形式の場合も、構造化アブストラクトと同じく、論文の核心的な内容を含める必要があります。
前述の質問に論理的な順序で答えることで、完全かつ効果的なアブストラクトの基礎を作ることができます。アブストラクト内の各要素は明確に見分けられるようにします。

最後に、完成したアブストラクトと論文の本文との間に一貫性があることを確認します。その際、データや結果、全般的な言葉づかいがすべて一致している必要がありる他、投稿規定にすべて遵守していることも確認します。同時に、単語数、構成、見出し、略語についてのジャーナルの規定に沿っているかも忘れずに確認てください。

追加のセクションや要素

医学ジャーナルでは、研究の主要な側面に焦点を当てた独立のセクションが追加で必要になることがあります。いずれにしても、通常、研究の主要な側面はどのアブストラクトにも入れる必要があります。

例:

  • 臨床面で学ぶべきポイント
  • 過去の知見/ 現在、明らかになったこと

まとめ

グラフィカル・アブストラクトとは、論文の主要な研究結果を一つの図にまとめたもので、本文中で使われている図を使用することも可能ですし、新たな図を作成しても構いません。

ジャーナルによっては、従来型の文章によるアブストラクトと併せて、グラフィカル・アブストラクトの提供を著者に求めている場合もあります。多くの場合、グラフィカル・アブストラクトの作成は任意です。しかし、読み手が論文の重要なメッセージを素早く理解するのに役立つため、将来的にはグラフィカル・アブストラクトの形式が主流になるかもしれません。

以下のサイトでは、各研究分野における優れたグラフィカル・アブストラクトの例が紹介されています。先ずは、例を見てみるのも良いかもしれません。