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ミツバチの活動と電磁場の関係性
ミツバチは花から花へ移動することで植物の受粉を助けることは広く知られていますが、実は、餌を探す、巣に帰還するなどの一連のプロセスは、地球が持つ電磁場に基づいて行われています。
近年、電力塔や携帯電話の使用などにより、地球の電磁場とは異なる人工的な電磁場が増加しており、これらがミツバチの受粉活動に与える影響が懸念されています。また、電磁場が植物に対して与える影響については研究が進んでおらず、謎に包まれたままでした。
今回ご紹介する論文「Electromagnetic fields disrupt the pollination service by honeybees」は、この問題の核心に迫る非常に興味深いものになっています。
人工的な電磁場はミツバチの受粉活動に悪影響を与える
論文の研究チームは、野外および実験室で実験を行い、人工的な電磁場への曝露がミツバチの採餌能力に影響を与え、生理的ストレスを引き起こすことを発見しました。これは、熱ショックタンパク質や抗酸化活性に関わる遺伝子の発現亢進として現れています。
また、人工的な電磁場への曝露は、ミツバチの行動に関連する遺伝子の発現レベルを低下させることもわかりました。これは、電磁場がミツバチの巣内・巣外の労働の切り替わりの時間に影響し、加えて長期記憶形成、磁気探知能力、運動能力にも障害を与える可能性があります。
実験の結果、電磁場周辺では花が多い場合でもミツバチが訪れる回数が減少し、電磁場が弱ければ花が少なくとも観測されるミツバチの数が多くなりました。この実験結果は、ミツバチの受粉活動に対する人工的な電磁場の影響が非常に強いことを意味しています。
人工的な電磁場は自然界にも悪影響を与える?
この研究からは、もう一つ非常に興味深い結果が得られました。それが、種子生産量の減少です。この結果の説明として考えられるのが、「人工的な電磁場の影響によって、自然の受粉媒介者であるミツバチの訪問が減少するため、種子生産量が減少する」というものです。
そこで研究チームは、ミツバチによる受粉と人工的な受粉で種子生産量に違いが生じるかを測定しました。その結果、受粉がミツバチのみによって行われた場合、種子生産量が減少することが分かりました。すなわち、「人工的な電磁場はミツバチの活動に対する影響を介して植物の繁殖と多様性にも影響を及ぼし、ひいては植物に依存する他の生物にも連鎖的な影響を及ぼす可能性がある」ということが示唆されたということになります。
この論文が今後の研究に与える影響は?
Isaは、「この論文は、人工的な電磁場が受粉行動や分子レベルの変化に至るまでミツバチを混乱させる原因となることについて、決定的な証拠を示している」としてこの研究を評価しています。また、「この研究結果により、電磁場がミツバチに与える影響のメカニズムの全貌が明らかになり、電磁場への曝露の長期的影響に関する理解が深まることが期待される」と述べています。
いかがでしたか?
今回は、電磁場とミツバチの活動・自然界との関係に関する面白い研究を、エダンズのエキスパートIsa Mackが解説しました。今後も興味深い研究について発信を続けていきますので、お楽しみに!
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