質的研究におけるサンプリング方法の選択は、調査結果に大きな影響を与えるため、慎重に考える必要があります。
すでに方法論に関する議論は膨れ上がっており、その膨大さに圧倒されてしまうこともあるでしょう。研究者としてのキャリアを積んだとしても、同じ方法論に固執してしまうなんてこともよくあることです。
近年の研究は定量的方法論に重点を置いているものが多く存在しますが、複数の方法論を組み合わせた研究やそのた他の研究をよりよく理解するためにも、質的方法論を知っておくことが非常に大切です。
この記事では、質的研究の方法論に焦点を当て、採用されることが多い質的サンプリング法を短時間かつ客観的に理解できるよう解説していきます。
解説のポイント
- 最も一般的な質的調査サンプリング方法の種類
- 各サンプリング法をいつ使うか
- 各サンプリング法の長所と短所
- 質的サンプリング法の具体的な使用例
- 質的研究、量的研究、混合研究に関して研究を批評・編集してくれるサービス
Table of contents []
質的サンプリング方法を選択するための最初のステップ
先験的(アプリオリ的)決定によるもの
- 包括的サンプリング(Comprehensive sampling)
- 極端/逸脱サンプリング(Extreme/deviant sampling)
- 強調サンプリング(Intensity sampling)
- 最大多様性サンプリング(Maximum Variation Sampling)
- 均質サンプリング(Homogenous sampling)
- 理論に基づくサンプリング(Theory-based sampling)
- 層化目的サンプリング(Stratified purposive sampling)
柔軟な決定によるもの
- 理論的サンプリング(Theoretical sampling)
- スノーボールサンプリング(Snowball sampling)
- コンビニエンス・サンプリング(Convenience sampling)
- ケースの承認と不承認(Confirming and disconfirming cases)
参考文献
質的サンプリング方法を選択するための最初のステップ
サンプリング方法について、最初に決定しなければならないことは、明確なサンプリング・フレームを定義することです。
サンプルに選ぶケースは、調査したい様々な問題や変数をカバーしている必要があります。サンプルを選択する際の基本は、最も豊富なデータを得られる可能性の高いケースを含めることです。(Gray, 2004)
時間と経費の関係から、質的研究では、特定のコンテクストにおける人々、事例、または現象に関する小さなサンプルを扱うことも多くなります。そのため、量的調査とは異なり、サンプルは無作為というよりも、目的に応じて(主観的に)に選ばれる傾向があります。(Flick, 2009)この記事では、主な目的に応じたサンプリング戦略を取り上げます。
また、質的サンプルは先験的に(アプリオリ的に)決定されていることもあれば、より柔軟に決定されることもあるということを理解する必要があります。(Flick, 2009)すなわち、あらかじめ決められたサンプルで開始し、正当な理由を付けてサンプルを拡大したり、変更したりすることも可能性もあるということです。
この記事では、「先験的な決定によるもの」と「柔軟な決定によるもの」という2つのパラメータに着目して、質的サンプリングの戦略について解説していきます。
先験的(アプリオリ的)決定によるもの
包括的サンプリング(Comprehensive sampling)
包括的(または全集団)サンプリングとは、研究のために関心のある特性(例えば、属性、特徴、経験、知識)を持つ、与えられた集団のすべてのケースまたはインスタンスを調べる方法です。(Gray, 2004)
ただし、このサンプリング戦略は、関心のある母集団全体をサンプリングすることが難しい場合が多いため、その使用は特殊な状況に限られます。
どのような場合に使用するか
研究対象が、特定の組織や特定の特徴を持つ人々に焦点を当てたものであり、かつ特定の特徴を持つ集団全体に接触することが可能な場合には、包括的サンプリングを使用します。(Gray, 2004)
基本的に、この方法を使うには次の2点が鍵となります。
- 母集団のサイズがある程度小さいこと
- 一般的でない特徴を持っていること
例えば、小さな会社(例えば10~30人)でリーダーシップに関する認識を調査する場合、簡単に社内の全従業員をサンプルとすることができるため、包括的サンプリングが最適であるということになります。
長所
- 詳細な分析、差別化、テストに最適(Flick, 2009)
- ある集団のすべてのケースを対象としているため、この方法を使用した調査結果の妥当性に対する信頼性が高まる
- 貴重な洞察を見逃すリスクを低減できる
短所
- 対象とする集団が小規模で、一般的でない特徴を持つ必要があるため、非常に特殊な研究にしか適用できない
- 一般化の可能性が非常に限られる
Gerhardは、慢性腎不全患者のキャリアを研究するために包括的サンプリング戦略を用いています。(Flick, 2009, p.117に引用)この研究におけるサンプルは、あらかじめ決められた特徴(男性、既婚、年齢30~50歳、イギリスの5つの病院での治療を開始)を持つ全患者でした。
この研究では、サンプリングは、性別、疾患、配偶者の有無、年齢、地域、限られた期間といういくつかの基準によって限定されていたことが重要です。
こうした特徴があらかじめ決まっていたために、包括的(全人口)サンプリングを達成することできたのです。
極端/逸脱サンプリング(Extreme/deviant sampling
極端/逸脱サンプリングとは、意図的に極端なものを選び、それに影響する要因を特定しようとするサンプリング方法です。(Gray, 2004)
通常、注目すべき成功例や失敗例など、特別なケースや珍しいケースに焦点を当てるために用いられます。例えば、改革プログラムに関する調査を実施する場合、特に成功した例や大失敗した例など極端な事例を含めます。こうした極端な例を選択することから、「極端/逸脱」サンプリングと呼ばれるのです。(Flick, 2009)
どのような場合に使用するか
極端/逸脱サンプリングは、特定の文脈における特殊な事例を研究するのに適しているといえるでしょう。
長所
- 非常に特殊な現象に関する情報を集中的に収集できる
- 特定の現象について「最も純粋な」洞察が得られるとみなされることがある
- 極端に異なる2つの視点から洞察を集めることができ、現象全体に対する理解を深めるのに役立つ
短所
- 極端な事例から誤って一般化してしまう危険性
- 選択バイアス
実例紹介
極端/逸脱サンプリングを用いた研究で最も広く知られているのは、おそらく1982年に出版されたWaterman and Petersの「In Search of Excellence: Lessons from America's Best-Run Companies」でしょう。ここでは、イノベーションと卓越性という点での傑出した(極端な)成功事例であった62社を選択しています。(Peters & Waterman [2004]を参照)
強調サンプリング(Intensity sampling)
強調サンプリングは、基本的には極端/逸脱サンプリングと同じ原理を持ちますが、極端な値に重点を置いていない点で異なります。
強調サンプリングに選ばれるケースは、情報が豊富で現象が強く現れているものの、極端とまでは言えないようなケースです。したがって、強調サンプリングは、極端なケースと比較して、より典型的なケースを捉えることに向いています。(Patton, 2002; Gray, 2004; Benoot, Hannes & Bilsen, 2016)
どのような場合に使用するか
Patton (2002) は、研究したい対象のバリエーションに関する事前情報をすでに持っている場合に、このサンプリング法を使用するのが理想的であると主張しています。したがって、調査内容によっては、事前の探索調査が必要になる場合もあります。
長所
- 発見的調査/探究に最適(Patton, 2002)
- 極端/逸脱した値のない集中的な事例を選ぶことで、極端な事例がもたらし得る歪みを避けることができる(Patton, 2002)
短所
- 事前情報とかなりの判断が必要。研究者は、自分が研究している特定の状況の変動の性質を把握するために、探索的な作業を行う必要がある (Patton, 2002)
- 十分な強度を持つ事例と極端な事例を混在させないために、研究対象の現象に関する幅広い知識が必要(Patton, 2002)
実例紹介
成績が平均以上/平均未満の学生の調査には、このサンプリング法が適しているといえます。なぜなら、そのような生徒たちは教育システムを「強烈に (intensely)」経験しているものの、極端なケースには当たらないためです。
最大多様性サンプリング(Maximum Variation Sampling)
最大多様性サンプリング戦略は、調査したい内容を横断するような、幅広いバリエーション(多様性)を捕捉し、記述することを目的とした標本抽出法です。(Patton, 2002; Gray, 2004)高いレベルのばらつきを捕捉するには、どのようなプロセスが必要でしょうか?
まず、自身や研究対象に関連する文献が認識している多様性(ばらつき)を探すために、具体的な特性を設定することから始めまる必要があります。例えば、教育レベル、民族性、年齢、社会経済的地位などがこれに当たります。
一般的にサンプルが小さい場合、異質性が高すぎると問題になることがあります。しかし、Patton (2002)によれば、この方法にはその弱点を強みに変えられる可能性があります。
最大多様性サンプリングから出現する共通パターンは、設定や現象の核となる経験や、中心的であると認識されている次元を捉える上で、価値があるものといえるでしょう。
どのような場合に使用するか
広範な現象に関する認識/実践のばらつきを探りたいとき。
長所
- 研究者は現象のすべてのバリエーション(多様性)を捉えることができる(Patton, 2002; Schreier, 2018)
- 各バリエーションに関する詳細な洞察が得られる(Patton, 2002; Schreier, 2018)
短所
- サンプルが少ない場合、事例が互いに異なりすぎて、共通のパターンが現れないことがある(Patton, 2002)
実例紹介
Ziebland et. al. (2004) は、インターネットが患者のがん体験にどのような影響を与えるかについて研究しています。この研究では、洞察の多様性を最大化するために、最大多様性サンプリングを使用しました。癌の種類、癌のステージ、年齢、性別が異なる人々を探すという点において、この標本抽出法は適しています。
均質サンプリング(Homogenous sampling)
均質サンプリング法は、均質(同質)なグループや設定、文脈を対象とすることでその分野を更に詳しく調べる際に使うサンプリング方法であり、最大多様性サンプリングの正反対のサンプリング法と言えます。均質サンプリングでは、特定のグループに焦点を絞ったインタビューなどが非常に効果的な可能性があります。(Gray, 2004)
どのような場合に使用するか
研究の目的が、共通の特徴を持つグループに特に焦点を当てることである場合に使用します。
長所
- 特定のグループについて非常に詳細な洞察が得られる(Patton, 2002)
- 焦点を当てたグループへのインタビューとの親和性が高い(Patton, 2002)
- 分析が単純(Patton, 2002)
短所
- 幅広いバリエーションを捉えられない(Patton, 2002)
実例紹介
Nestbitt et. al. (2012) は、カナダの思春期の母親の認識と授乳育児決定に関する研究です。この研究では、ダラム地方に住み、生後12ヶ月までの子どもを持つ思春期の母親(15~19歳)の16の均質なケースを意図的に集めています。なお、その他の条件は、英語を流暢に話し、乳児に少なくとも1回は母乳を与えていることでした。研究者は、均質サンプリングを用いることで、こうした非常に特殊なグループを詳細に調査しようとしたのです。
理論に基づくサンプリング(Theory-based sampling)
理論に基づくサンプリングは、基本的に、フォーマルな基準サンプリングとなります。より概念的であり、ケースは理論的構成要素を表す根拠に基づいて選ばれます。(Patton, 2002; Gray, 2004)
ここで研究者は、重要な理論的構成要素の可能性または標章に基づいて、現象、ある人物の人生、時代、または人物像をサンプリングすることになります。
どのような場合に使用するか
研究に関心のある、既存の理論に由来する概念を研究したいときに使用します。
長所
- 既存の理論的概念や確立された概念に詳しくなることで、分析が容易になる
- 確立された理論概念に取り組むことで、確立された理論に対する新たな洞察に貢献できる
短所
- 全く「新しい」発見ができる確率はやや低い
- 特定の理論構成に関心のある人々、プログラム、組織、コミュニティを見つけるのが難しいため、関心のある集団を決定するのが難しい可能性がある。これは、調査するグループの特徴が予め決まっているサンプリングを行う場合とは異なる(Patton, 2002)
実例紹介
Buckholdは、「レジリエントである」という、特定の理論から導き出された基準を満たす人々を調査しています。(Patton [2002, p. 238] から引用)これは、虐待の被害者でありながらも生き延びることができた女性のレジリエンスを分析することを目的としたものです。
層化目的サンプリング(Stratified purposive sampling)
層化目的サンプリングでは、サンプルの構成に関する決定がデータ収集の前に行われます。
Schreier(2018)によれば、これは以下の4つのステップで行われると言います。
- 対象とする現象において、どの要因が既知であるか、または変動を引き起こす可能性が高いかを決定する
- サンプリング・ガイドを構築するために、2~4つの要因を選択する
- 2つ以上の因子を選ぶ場合、すべての因子を可能な限り組み合わせる
- 各セルまたは因子の組み合わせについてのユニット数を決定する
どのような場合に使用するか
興味のある現象に影響を与える既知の因子を検証したい場合に使用します
例えば理論的には仮説があるが、それを支持する経験的データはないような場合、ある要因を対象としてサンプリングに含めることで、調査している現象に関するその重要性を把握できる可能性があります。
長所
- 研究に関心のあるいくつかの既知の要因に焦点を当てることができる(Schreier, 2018)
- サンプルの構成をあらかじめ決めておくことで、調査するケース/人/グループが見つけやすくなる
短所
- 事前に決めた構成に固執すると、事例から発見された新たな要因が調査されないままになってしまう恐れがある
- 最も関心のある要因を持つケースを見つけるのは難しい可能性もある
実例紹介
Palacic(2017)は、「gazelles」と「MICE」(企業の種類を表すビジネス/市場用語)における起業家的リーダーシップと業績について調査しました。ここでのサンプルは、製造業、販売業、サービス業という3つの主要産業部門に携わる「gazelles」と「MICE」の事例を含むように、意図的に構成されています。
柔軟な決定によるもの
理論的サンプリング(Theoretical sampling)
理論的サンプリングは、もともと基礎理論に関する方法論として開発されたものであり、理論生成を目的としたデータ収集に関するプロセスです。これは、データ収集とデータ分析の間の絶え間ない相互関係の中で行われ、研究プロセスから生まれた概念および/または理論を基に行われます。(Gray, 2004; Flick, 2009)
サンプルは通常、異なるインスタンスの比較を可能にする異質なケースで構成されます。(Schreier, 2018)
どのような場合に使用するか
ある現象について新しい理論を生み出すことを目的としている場合に使用します。
長所
- 研究にイノベーションをもたらす可能性がある(Schreier, 2018)
- サンプルの母集団に「固定的な」基準がないため、他の多くの手法と比較して、サンプルがより柔軟である。
短所
- 新しい理論の構築は非常に困難であるため、経験の浅い研究者には不向き
- 非常に時間がかかり、複雑である
実例紹介
Glaser and Straussは、病院における死に対する意識を調査するためにこの方法を用いたことで有名です。(Flick, 2009, pp.118-119に引用)ここでは、病院における死が社会的プロセスとしてどのように組織化されるかについて新たな理論を構築するために、さまざまな病院で参与観察を行っています。
彼らは現場に直接触れながら、段階的なプロセスを経てサンプルを構築していきました。まず、患者の死に対する意識が最小化されている状況(昏睡状態など)を調査しました。次に、スタッフや患者の意識が高く、死期が早いことが多い状況(集中治療室など)に移り、サンプリングを行います。その後、死の可能性は高いが、死期は遅くなりがちな状況(例:癌)を、そして最終的には、死が予期されず急速に進行する状況(例:救急医療)を観察していきました。
スノーボールサンプリング(Snowball sampling)
スノーボールサンプリング(または、チェーン・リファラル・サンプリング)は、質的社会学研究で広く用いられている方法です。(Biernacki & Waldorf, 1981; Gray, 2004; Flick, 2009; Heckathorn, 2011)この方法は多くの数を集めるために効果的です。また、「人は自分と似た人を知っている」という考えが前提にあります。
スノーボールサンプリングは、手の届きにくい集団を調査するのに特に役立ちます。したがって、デリケートな問題や、真の対象集団を見つけ、接触し、同意を得るために内部の人間を知る必要があるようなプライベートな問題に焦点を当てた研究などで最も活躍します。(Biernacki & Waldorf, 1981; Heckathorn, 2011)
研究者は、研究の対象となる特徴を持つ人と面識のある人を紹介してもらい、研究サンプルを形成します。まずは、手の届きやすい人からサンプルを採取することから始め、その人物とのインタビューやコミュニケーションに成功したら、研究者は同じ特徴を持つ他の人物の紹介を依頼し、これを繰り返して調査を進めるのです。(Heckathorn, 2011)
どのような場合に使用するか
対象者グループを見つけることが難しく、その集団への「入口」が必要な場合に使用します。
長所
- 到達困難なグループの研究に最適(Biernacki & Waldorf, 1981; Gray, 2004; Flick, 2009; Heckathorn, 2011)
- 情報が豊富なケースのサンプリングを通じて、特定のグループについて非常に詳細な洞察を得ることができる(Patton, 2002)
短所
- 研究者が道徳的、法的、または社会的に敏感な問題(例:売春、薬物中毒)を含むトピックを研究しており、そのグループの知り合いがいない場合、最初の「入口」を見つけるのが難しい
- 一般化の可能性が非常に限られる
実例紹介
Cloud and Granfield(1994)は、治療に頼らずに依存症を克服した薬物・アルコール依存症患者を研究するために、スノーボールサンプリングを使用しています。これは、自助グループや治療に参加している患者とは異なり、本来治療を受けないという患者グループは広く分布しているにも関わらず、参加者は元薬物中毒者であった過去を暴露したがらなかった(すなわち、デリケートな問題であった)ために、他の方法ではサンプルを十分に集めることができなかったためです。
コンビニエンス・サンプリング(Convenience sampling)
コンビニエンス・サンプリング(convenience sampling)とは、迅速で便利な方法で単純にケースを選ぶサンプリング法です。
おそらく最も一般的なサンプリング方法ですが、Patton (2002)によれば、目的的または戦略的とは見なされないため、研究においては望ましくありません。
ただ、「どうせ一般化するにはサンプル数が少なすぎるのだから、アクセスしやすく、調査費用が安いケースを選んだほうがいいだろう」と考え、この方法を選ぶ研究者が多いのも事実です(Patton, 2002)。
特に資金の限られている修士課程の学生の間では非常に一般的な戦略として用いられており、学生仲間に論文のサンプルの一部になってもらうことは多々あります。(Schreier, 2018)また特筆すべきは、オンライン調査によって、地理的な制約を超えて、コンビニエンス・サンプリングがさらに簡単に行えるようになっているということです。
どのような場合に利用するか
質的調査のためのリソース(主に時間とお金)が少ない場合には、この方法を使用します。多くの研究が大学生を対象に行われているのはこのためです。学生や研究者は研究機関付近に何人でもいます。学生であれば、少額の報酬でインセンティブを与えることでサンプリングすることも容易です。
長所
- 時間、お金、労力を節約できる(Patton, 2002)
- 資金がなく、時間厳守の質的研究(修士論文や多くの博士論文によく見られる)に最適
短所
- 「評判が悪い」(Schreier, 2018)
- 信頼性が低い(Patton, 2002)
- 情報に乏しい事例が得られる恐れがある(Patton, 2002)
実例紹介
Augusto and Simões(2017)は、Facebookの監視に関する認識と予防策を把握するためにコンビニエンス・サンプリングを用いています。この研究は修士論文の一部であり、使用可能なリソースが限られていたため、コンビニエンス・サンプリングが選択されました。ただし、これは決して研究内容や調査結果を否定するものではなく、単に研究を進める上で最も実現可能な方法がコンビニエンス・サンプリングであったというだけです。
ケースの承認と不承認(Confirming and disconfirming cases)
ケースの承認と不承認は、第二段階のサンプリング方法として頻繁に使用されます。
ここでのケースは、第1段階のサンプリングから浮かび上がったパターンを承認または否認できるという前提のもと、選ばれます。(Gray, 2004)
探索的プロセスの後、新たなデータの収集や追加的なケースのサンプリングを通じて、アイデアを検証、パターンの重要性や意味を承認します。さらに調査結果の実現可能性を検討することもあります。(Patton, 2002)
どのような場合に使用するか
一般に、データから出現した発見をテストするのに理想的です。
長所
- 浮かび上がった発見を強化する
- 可能性のある「ルールを証明する例外」または発見を否定する可能性のある例外を特定できる(Patton, 2002)
短所
- 通常、「第1段階」のサンプリングが必要
- 有用であることは間違いないが、量的調査の方が特定の発見を検証しやすいという議論が存在する
実例紹介
もし学生の大学志望動機を調査したい場合このサンプリング法が有効な可能性があります。例えば、最初の面接の結果、面接対象者が進学を目指す主な理由がルーチンワークの日雇いを避けるためであることがわかっているとしたら、この方法は最適だといえるでしょう。ただし、調査結果は慎重に傾向を調べ、外れ値がないかをチェックする必要があります。
サンプルサイズが信用性を左右する!研究のサンプルデザインに言及した、 こちらのエピソードをはじめ、エダンズの多くの専門家たちがマルチメディアリリースページで解説しています。ぜひ、あわせてご覧ください。
参考文献 []
Augusto, F. R., & Simões, M. J. (2017). To see and be seen, to know and be known : Perceptions and prevention strategies on Facebook surveillance. Social Science Information, 56(4), 596–618. https://doi.org/10.1177/0539018417734974
Benoot, C., Hannes, K., & Bilsen, J. (2016). The use of purposeful sampling in a qualitative evidence synthesis : A worked example on sexual adjustment to a cancer trajectory. BMC Medical Research Methodology, 16(21), 1–12. https://doi.org/10.1186/s12874-016-0114-6
Biernacki, P., & Waldorf, D. (1981). Snowball sampling: Problems and techniques of chain referral sampling. Sociological Methods & Research, 10(2), 141–163.
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