英文校正 英文校閲 研究者向けサービス
0120-554-685
エダンズのピーター博士が解説

信頼性を左右するサンプルサイズ
聴覚と認知能力の関係性は?

Quicktakes エピソード027

加齢が進むにつれて低下が進む「聴力」と「認知能力」。実は、この二つの能力は関連があり、「ある治療法」によって、難聴と認知能力の低下という高齢者における二つの課題を一気に解決することができる可能性が最新研究で示されました。

このエピソードでは、聴力と認知力の関連性に関する最新の研究および、研究の質を左右するサンプリングの重要性を、エダンズのピーター博士が解説する様子をお届けします。

最新研究をオリジナル動画で解説!

動画を見る

00:00:難聴と認知力低下には関連性がある?

550:55:最新研究の実験型研究手法

1332:13:研究結果:難聴改善は認知力の低下を防げるのか?

1702:50:研究の医療ケア業界へのインパクトと今後の展望

聴力と認知能力は密接に結びついている?エダンズのピーター博士を魅了した注目の論文を5分間で解説します。

英語プレゼンの参考に!ネイティブの発音で研究を語る

ポッドキャストを聞く

研究の要点+エキスパートTIPSで深掘り理解

じっくり読む

解説のポイント

  • 難聴と認知力の関連性
  • 優れた実験デザインの研究方法
  • 最新研究の日常生活における意義
  • 実験おけるサンプリングデザイン

この研究の背景は?

加齢による難聴と認知機能低下の関連

加齢とともに耳の聞こえが悪くなることはよく知られていますが、近年、難聴が認知機能の低下と関連している可能性が示唆されています。高齢者の健康問題として、難聴と認知機能の低下は切り離せない関係にあると考えられ、これらを結びつける様々な研究が行われてきました。

これを裏付けるための研究として、2023年に最新の研究 Sustained Cognitive Improvement in Patients over 65 Two Years after Cochlear ImplantationがBrain Sciences誌に掲載されました。今回紹介するこの研究では、高齢者を対象として、聴力の改善が認知能力の低下防止にどのような効果があるのかを検証しています。

エキサイティングな研究手法・結果とは?

実験デザイン

この研究では、33人の重度の難聴患者が参加しました。参加者は男女比が均等に保たれており、難聴治療として人工内耳を使用している患者が対象となっています。人工内耳は聴覚の機能を補うために体内に埋め込まれる電子機器で、特に重度の難聴に対して用いられます。

研究チームは、人工内耳の埋め込み前と埋め込みの1年後、2年後の時点で、参加者の聴覚能力と認知能力がどのように変化したのかを評価しました。評価方法としては、それぞれ以下のものが用いられています。

聴力評価:純音検査、フライブルク単音節発話テスト
認知能力評価:ウェクスラー成人知能尺度

聴力改善で認知能力も向上!

研究の結果、以下の結果が確認されました。

  1. 人工内耳の埋め込みによって、参加者の聴力が有意に改善
  2. 聴力の改善に伴い、認知能力にも有意な改善

前者については当然と言えますが、後者は特にエキサイティングな研究結果と言えるでしょう。具体的には、人工内耳の埋め込みから1年後には認知の処理速度が改善し、2年後には、処理速度とワーキングメモリの両者に改善が見られました。

専門分野内外へ、研究がもたらすインパクト

高齢者ケアにおける重要課題に光を灯す

この研究結果は、難聴の治療が認知機能の低下を抑制または遅らせる可能性を示唆しており、特に高齢者における二つの主要な課題、すなわち「難聴」と「認知機能の低下」に対する新しい治療アプローチを提供することが期待されます。患者やその家族、また看護師や介護士などのケアを行う人々にとって、これは生活の質の向上に大きく寄与するはずです。


エダンズのエキスパートが、独自の視点で切り込む!

堅実な研究手法で分かりやすく、客観的な評価が可能

この論文は、重度の難聴患者を対象に人工内耳の効果を調査するという明確な研究目的を持っています。使用された手法は具体的で、結果の解釈に関して信頼性が高いと言えるでしょう。また、純音検査やウェクスラー成人知能尺度の使用は、評価の標準化を保証し、結果の信頼性を高めています。

サンプルサイズや交絡因子などを改善できれば、より信頼性が高い研究に

一方で、この研究には改善点があります。それが、研究のサンプルデザインです。

この研究のサンプルサイズは33人と小さく、結果の一般化には限界があります。 また、患者の背景の多様性も限定的です。

年齢、性別、職業歴、難聴の程度や期間などの要因で患者を分類することで、これらの要因が結果にどのように影響を与えるか、というさらに詳細な分析が可能になります。

サンプリングについては、多くのエキスパートがコメントを残しています。マリア博士の多発性骨髄腫の治療法に関する研究アスピリンの副作用について検証した研究の解説エピソードもぜひご一読ください。

しかし、「全体的には難聴の改善が認知能力の改善にも繋がるという考えを客観的に裏付けた論文として、非常に意義のある研究であった」とピーターは話しています。

いかがでしたか?

このエピソードでは、聴力と認知能力の関係性に関する最新の研究を、エダンズのピーター博士が紹介する様子をお届けしました。今後も興味深い研究について発信していきますのでお楽しみに!

エキスパートが独自の視点で選んだ、エキサイティングな研究をご紹介!

著者
Häußler et al.
出版年
2023
掲載誌
Brain Sciences

研究者・著者の皆さまを、全力でサポートします

エダンズは、皆様が取り組む研究分野における研究のギャップを見つけだし、論文の校正、最適なジャーナル選択、そして研究の影響力を最大限に高めるためのコンテンツ作成まで、研究の全サイクルで一貫したサポートを提供します。

エダンズ・エキスパートのご紹介

Peter Milovanovic(ピーター・ミロヴァノヴィック)

ベオグラード大学医学部助教授。ハンブルク大学の科学者としても活躍、骨格系を専門とし人間解剖学の部門で働く一方、形態学的評価が必要な医学的トピックも扱う。使用する研究手法は、臨床画像法や先端顕微鏡、機械試験、免疫組織化学など幅広く、新技術の応用にも経験がある。60以上の論文を国際的な査読付きジャーナルに発表しており、そのうち40以上がインパクトファクターによる該当カテゴリのトップ30%にランクインしたジャーナルで公開され、1000回以上引用されている。また、査読者として高評価のジャーナルや資金提供機関で活動している。2017年からは、Edanz Groupの研究コンサルタントとしての活動も行う。

関連性のあるコンテンツ