Quicktakes エピソード015
多発性骨髄腫は非常に治療が難しい疾患として有名です。現在は、標準治療が開発されていますが、その効果は十分なものではなく、より効果的な治療プロトコルが模索されています。
そこでこの記事では、多発性骨髄腫患者におけるCAR-T細胞療法の効果と安全性に関する最新の研究を、血液病理学の専門家、マリア・アナスタシオ博士が紹介します。マリア博士による治験をデザインするためのTipsも必見です!
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マリア博士を唸らせた最新研究をご紹介!血液がん治療におけるCAR-T細胞への期待と安全性に関する論文を、エダンズのマリア博士が5分間で解説します。
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解説のポイント
- ■ CAR-T細胞療法の基本概念
- ■ CAR-T細胞療法の効果と安全性を評価した研究の紹介
- ■ 最新研究における治験のデザイン
- ■ サンプル設計におけるコツ
この研究の背景は?
多発性骨髄腫の治療法として注目されるCAR-T細胞療法
多発性骨髄腫は血液がんの一種であり、その治療には複数の方法が必要です。また、従来の治療法に耐性を持つ患者が増えているため、新しい治療法の開発が急務となっています。
そこで現在注目されているのが、CAR-T細胞療法です。CAR-T細胞は、「キメラ抗原受容体T細胞」の略称であり、がん細胞を攻撃する機能を持ちます。この細胞を活用することで、多発性骨髄腫のような血液がんを治療する画期的な方法です。この方法は、以下のようなプロセスで行われます。
- 健康なT細胞を 患者の体内から取り出す
- 取り出したT細胞の受容体が変容するよう改変する
- 患者の体内に戻す
エキサイティングな研究手法・結果とは?
第Ⅲ相無作為比較試験を用いた研究方法
CARTITUDE-4と呼ばれる今回の研究「Cilta-cel or Standard Care in Lenalidomide-Refractory Multiple Myeloma」は、CAR-T細胞療法であるCilta-celの効果と安全性を標準治療と比較し、評価することを目的としています。
研究チームは、研究に参加する患者を標準治療を行うグループと、新治療を行うグループにランダムに振り分けて治療を行う第Ⅲ相無作為比較試験が採用しました。前治療としてファーストライン、セカンドライン、サードラインの治療を受けた多発性骨髄腫患者419名が参加し、無作為にCilta-cel治療群と標準治療群に割り付けられ、1年以上かけて、それぞれ治療が行われます。
Cilta-celの効果と安全性を実証
実験の結果、12か月の無増悪生存期間(PFS)が、Cilta-cel治療群で76%、標準治療群で48.6%であり、Cilta-cel治療群での効果が顕著でした。加えて、Cilta-cel治療群ではより多くの患者が完全奏効を達成しています。
副作用に関しては、CAR-T細胞療法でしばしば見受けらえるサイトカイン放出症候群がCilta-cel治療群の76%で確認されましたが、ほとんどがグレード1~2であり、軽度なものにとどまりました。
試験タイプ | 第Ⅲ相無作為比較試験 |
---|---|
期間 | 15.9か月(中央値) |
効果 | Cilta-cel:76% (標準治療:48.6%) |
安全性 | グレード1~2と軽度 |
専門分野内外へ、研究がもたらすインパクト
この研究は、多発性骨髄腫の治療法として期待を寄せられるCAR-T細胞療法の有効性を強く示しており、臨床現場での治療選択に大きな影響をもたらす可能性があります。血液がんに苦しむ多くの人を救うためにも、今後のさらなる進展が期待されます。
エダンズのエキスパートが、独自の視点で切り込む!
サンプルが増えれば、母集団に近い特徴を得られる
この試験の長所として、81の施設の患者が参加しており、バランスの取れた患者集団を捉えている点が挙げられます。実際の集団に近ければ近いほど、効果や安全性の妥当性も高まるため、サンプルは多いに越したことはありません。
対照群が十分な特徴を持っているかどうかも確認する
しかしながら、試験開始時に標準治療で使用されることになっている2つの強力な薬剤が承認されていなかったため、これらを標準治療群の治療として盛り込むことができなかったことは、制約として考慮すべき点です。対照実験を行う際には、比較対象が十分であるかどうかについても改めて確認する必要があるのです。
いかがでしたか?今回は、再発性多発性骨髄腫患者に対するCAR-T細胞療法の有効性と安全性に関する研究を、エダンズのエキスパート、マリア・アナスタシオ博士が解説しました。引き続き、この分野の進展に注目です。
他のエキスパートのコメント
スコット博士
CAR-T細胞療法は活発な研究分野なので、このトピックは非常に興味深いです。一方で、がん免疫療法は一般に評価されている以上に危険で、必ずしも効果があるとは限らないことを指摘しておく必要があります。(例:多発性骨髄腫に対する二重特異性モノクローナル抗体のシステマティックレビュー)