Quicktakes エピソード006
成人の中で最も一般的な白血病として知られる慢性リンパ性白血病。そんな病気の治療法としてBTK阻害剤「ザヌブルチニブ」が新たな希望を生み出しています。この記事では、エダンズの誇る血液病理学のエキスパート、マリア・アナスタシオが、ザヌブルチニブの療効果を検証した興味深い論文を紹介する様子をお届けします。マリアが考える、優れた治験をデザインするためのTipsも必見です!
最新研究をオリジナル動画で解説!
動画を見る
慢性リンパ性白血病(CLL)治療の副作用を克服!論文構成上の優れた点も解説
英語プレゼンの参考に!ネイティブの発音で研究を語る
ポッドキャストを聞く
研究の要点+エキスパートTIPSで深掘り理解
じっくり読む
解説のポイント
- ■ 慢性リンパ性白血病治療の現在地
- ■ 次世代BTK阻害剤「ザヌブルチニブ」の効用
- ■ 評価の高い治験デザインの紹介
- ■ 優れた知見に必要な要素は?
この研究の背景は?
慢性リンパ性白血病とは?原因と既存の治療法
慢性リンパ性白血病(CLL)は、成人の中で最も一般的な白血病であり、一度治療された後も再発することが多い、やっかいな疾患です。現行の治療法としては、血液がんに対して効果が期待されるブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤を使用します。しかし、既存のBTK阻害剤には、心臓障害や出血といった副作用が存在することがわかっており、この克服が課題となってきました。
エキサイティングな研究手法・結果とは?
次世代BTK阻害剤「ザヌブルチニブ」の提案と検証の方法
論文「Zanubrutinib or Ibrutinib in Relapsed or Refractory Chronic Lymphocytic Leukemia」の研究グループは、CLLの新たな治療法として、次世代BTK阻害剤であるザヌブルチニブ(Zanubrutinib)の使用を提案し、ALPINEランダム化試験を用いてその結果を検証しています。具体的には、再発または難治性のCLL患者652人を対象として、既存のBTK阻害剤イブルチニブと次世代BTK阻害剤のザヌブルチニブを使用し、その効果と安全性を比較しました。
ザヌブルチニブの慢性リンパ性白血病に対する効果は大!
研究の結果、ザヌブルチニブは、イブルチニブよりも全体的な反応率が高く、無増悪生存期間(PFS)も長かったことが明らかになりました。また、予後が不良な患者グループに対しても同様の結果が得られました。加えて、既存治療法の副作用であった心臓の不整脈の発生率がザヌブルチニブを処方したグループで低くなったことも確認されており、安全性という面でも高いパフォーマンスを示しています。
専門分野内外へ、研究がもたらすインパクト
慢性リンパ性白血病治療に新たな希望
今回の研究で検証が行われたザヌブルチニブは、その効果だけでなく、安全性の面においても既存治療よりも高いパフォーマンスを発揮しました。既存の治療薬で心臓障害や出血などの副作用に苦しむ患者さんのためにも、臨床現場での活躍が期待されます。
今後の動向から目が離せない治療薬の筆頭と言えるでしょう。
エダンズのエキスパートが、独自の視点で切り込む!
大規模かつ多様な治験データは、優れた評価に直結する
再発または難治性のCLLを持つ患者に対する次世代BTK阻害剤ザヌブルチニブの効果を実証したこの研究は、論文の構成としても参考にすべき素晴らしい点がありました。マリアは、以下の4つの点を特に高く評価していました:
- ALPINEランダム化試験という将来性の高い方法論を採用した
- 15の国から652人という大規模なサンプルを集めた
- 2年半という長い追跡期間を設けた
- 治療の意志のある集団で分析を行い、脱落者によるバイアス(減少バイアス)を回避した
一方、被験者および試験責任者が各被験者に投与されている製剤を知っている状態で実施されるいわゆる「オープンラベル」試験であったため、バイアスが発生する可能性があったことを、考えうる欠点として指摘しています。しかし、同時に、独立した審査委員会の評価結果が研究者の評価と一致していることから、この欠点は相殺されるだろうとも述べています。
いかがでしたか?
今回は慢性リンパ性白血病の新たな治療法に関する論文を、エダンズのエキスパート、マリア・アナスタシオが解説しました。今後も興味深い研究について発信を続けていきますので、お楽しみに!