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慢性リンパ性白血病とは?既存の治療法とその懸念点
慢性リンパ性白血病(CLL)は、成人の中で最も一般的な白血病であり、一度治療された後も再発することが多い、やっかいな疾患です。現行の治療法としては、血液がんに対して効果が期待されるブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤を使用します。しかし、既存のBTK阻害剤には、心臓障害や出血といった副作用が存在することがわかっており、この克服が課題となってきました。
次世代BTK阻害剤「ザヌブルチニブ」の提案と検証の方法
論文「 Zanubrutinib or Ibrutinib in Relapsed or Refractory Chronic Lymphocytic Leukemia 」の研究グループは、CLLの新たな治療法として、次世代BTK阻害剤であるザヌブルチニブ(Zanubrutinib)の使用を提案し、ALPINEランダム化試験を用いてその結果を検証しています。具体的には、再発または難治性のCLL患者652人を対象として、既存のBTK阻害剤イブルチニブと次世代BTK阻害剤のザヌブルチニブを使用し、その効果と安全性を比較しました。
ザヌブルチニブの慢性リンパ性白血病に対する効果は大!
研究の結果、ザヌブルチニブは、イブルチニブよりも全体的な反応率が高く、無増悪生存期間(PFS)も長かったことが明らかになりました。また、予後が不良な患者グループに対しても同様の結果が得られました。加えて、既存治療法の副作用であった心臓の不整脈の発生率がザヌブルチニブを処方したグループで低くなったことも確認されており、安全性という面でも高いパフォーマンスを示しています。
論文として参考とすべき点は?
再発または難治性のCLLを持つ患者に対する次世代BTK阻害剤ザヌブルチニブの効果を実証したこの研究は、論文の構成としても参考にすべき素晴らしい点がありました。マリアは、以下の4つの点を特に高く評価していました:
- ALPINEランダム化試験という将来性の高い方法論を採用した
- 15の国から652人という大規模なサンプルを集めた
- 2年半という長い追跡期間を設けた
- 治療の意志のある集団で分析を行い、脱落者によるバイアスを回避した
一方、被験者および試験責任者が各被験者に投与されている製剤を知っている状態で実施されるいわゆる「オープンラベル」試験であったため、バイアスが発生する可能性があったことを、考えうる欠点として指摘しています。しかし、同時に、独立した審査委員会の評価結果が研究者の評価と一致していることから、この欠点は相殺されるだろうとも述べています。
いずれにせよ、今後の慢性リンパ性白血病の臨床現場での活躍が期待されますね!
がんの治療に関する最新の研究のひとつとして、乳がんの再発や転移に対する新たな解決法について、エダンズとトップジャーナル・BMJ社のコラボレーション企画も好評配信中です。ぜひ、併せてご覧ください。
いかがでしたか?
今回は慢性リンパ性白血病の新たな治療法に関する論文を、エダンズのエキスパート、マリア・アナスタシオが解説しました。今後も興味深い研究について発信を続けていきますので、お楽しみに!
エダンズ・エキスパートのご紹介
マリア・アナスタシオ(Maria Anastasiou)
アテネを拠点に活動する血液学者。過去にスイスで10年間研究活動に従事した経験を持つ。余暇はパートナーと2匹のシーズーと一緒にギリシャの美しい景色や海岸を楽しんでリフレッシュするのがマリア流。
新たな治療法や病気解明への道を切り拓く研究者・著者の皆さまを、全力でサポートします
エダンズは、皆様が取り組む研究分野における研究のギャップを見つけだし、論文の校正、最適なジャーナル選択、そして研究の影響力を最大限に高めるためのコンテンツ作成まで、研究の全サイクルで一貫したサポートを提供します。多忙を極める研究者の皆様が直面するあらゆる問題に対して、エダンズの専門家チームが徹底した支援を行います。詳細は、 研究者向けサービスと英文校正サービスをご覧いただき、ご不明な点等ございましたらこちらまで、お気軽にお問い合わせください。