エダンズのピーター博士が解説

優れたRCTの研究事例を紹介!
音楽で内視鏡検査のケアを実現?

Episode - 022

Quicktakes エピソード022

音楽には、聴く人をリラックスさせる効果があることは広く知られています。しかし、痛みを伴う治療を音楽で楽にすることはできるのでしょうか?このエピソードでは、大腸内視鏡検査に対するピアノ音楽の効果を検証した最新の研究を、エダンズが誇る医学・健康科学のエキスパート、ピーター博士が紹介する様子をお届けします。

医学論文を成功させるための研究手法に関するTipsも必見です!

最新研究をオリジナル動画で解説!

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00:00:オープニング

320:32:大腸内視鏡検査の概要

1051:45:RCTを用いた研究手法の紹介

1422:22:ピアノ音楽を聴くと検査が楽に?

1863:06:臨床現場への応用可能性は?

2193:39:今後の研究の余地を提案

エダンズの医学・健康科学のエキスパート、ピーター博士をうならせた最新研究を紹介!音楽が秘めた治療における力とは?医療現場への影響とともに4分間で語ります。

英語プレゼンの参考に!ネイティブの発音で研究を語る

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解説のポイント

  • 大腸内視鏡検査の課題点
  • ピアノ音楽に秘められた苦痛軽減効果
  • 治験を成功させるための実験デザイン
  • 最新研究の臨床現場への応用可能性

この研究の背景は?

大腸内視鏡検査の課題

大腸内視鏡検査は、大腸がんや炎症性腸疾患など、多くの大腸の疾患を診断し治療するために不可欠な医療技術です。この検査では、小さなカメラが取り付けられた柔軟なチューブを使用して大腸の内部を観察します。

しかし、この検査はしばしば患者にとって不快な体験となります。腹痛や腹部の膨張感といった身体的な不快感に加え、不安や恐怖といった心理的なストレスも伴います。これらの影響は、患者が必要な検査を受けることを避ける原因となり得ます。このため、検査の快適性を改善し、患者の経験をより良いものにする方法の開発は、現代医療において重要な課題の一つとなっています。

この背景を踏まえて、今回紹介する研究「 Effects of light music played by piano intervention on satisfaction, anxiety, and pain in patients undergoing colonoscopy: A randomized controlled trial 」は、大腸内視鏡検査中にゆったりとしたピアノ音楽を聴くことが、患者の不快感、不安、苦痛を軽減するかどうかを調査しました。

エキサイティングな研究手法・結果とは?

ランダム化比較試験を用いた研究設計

この革新的な研究では、大腸内視鏡検査を受ける260人の患者を対象に、ゆっくりとしたピアノ音楽が患者の体験にどのような影響を及ぼすかを調査しました。具体的には、112人の患者が大腸内視鏡検査中にピアノ音楽を聴くグループ(音楽群)として選ばれ、残りの148人は何も聴かないコントロール群として割り当てられました。このランダム化比較試験(RCT)は、音楽療法の客観的な効果を評価することを目的としています。

(治験デザインに関する記事は、こちら もあわせてご覧ください)

ゆったりしたピアノ音楽は大腸内視鏡検査の苦痛を軽減

実験の結果、ピアノ音楽が苦痛軽減効果を持つことが示されました。例えば、音楽を聴いたグループでは、大腸内視鏡検査の難しさと検査後の不安のスコアが有意に低くなっています。これは、音楽が心理的な苦痛を軽減し、検査体験を向上させる効果があることを示唆しています。また、大腸内視鏡検査の苦痛管理やサービス全般の満足度も、コントロール群に比べて音楽群の方が高かったのです。

さらに、ピアノ音楽群の患者の多くは、もう一度検査を受けるとすれば、再度音楽を聴きたいと答えました。この結果から、音楽が患者の再検査への意欲に直接的な影響を与えるとは限らないものの、検査体験の質を向上させる可能性があることが示されました。

専門分野内外へ、研究がもたらすインパクト

大腸内視鏡検査以外への音楽療法の使用に期待がかかる

この研究は、大腸内視鏡検査のような医療処置における患者の体験改善に焦点を当てていますが、その影響は内視鏡検査に留まらず、臨床現場全体への波及の可能性を秘めています。特に麻酔や鎮静剤の使用が困難または不可能な場合には、音楽を聴かせることが別の形の緩和ケアとして成立する可能性を示唆しています。

音楽療法の採用は、医療技術の進歩とともに、患者の快適性と満足度を高める新たな道を開くかもしれません。

また、今回の研究では触れられていませんが、音楽療法が医師や看護師を含む医療提供者にもプラスの影響を与えることも考えられます。患者がリラックスしていれば、医療処置の実施が容易になります。医療提供者のストレスも軽減されることも実証されれば、音楽の秘める力が医療現場全体に与える影響はより大きなものになるでしょう。


エダンズのエキスパートが、独自の視点で切り込む!

内視鏡検査だけじゃない!音楽の医療現場への応用可能性

ピーターは、大腸内視鏡検査中の音楽療法の効果を探求するという革新的なアプローチを評価しています。加えて、方法論の観点からもこの研究が優れている点についても語りました。

  1. 厳密な研究設計
    この研究はランダム化比較試験(RCT)という厳格な方法を採用しており、結果の信頼性を高めています。被験者をランダムに分けることにより、偏りを最小限に抑え、音楽の効果をより正確に評価することが可能になっています。
  2. 具体的な評価指標の使用
    不安や苦痛など、患者の体験を定量的に評価するための明確な指標が用いられています。これにより、音楽療法の効果を具体的かつ客観的に評価することができます。

一方で今後の研究の余地として残されている点もいくつか存在します。

  1. 音楽の種類と患者の個人差
    研究では特定のタイプの音楽(ゆったりとしたピアノ音楽)のみが使用されています。音楽の種類や患者の個人差が結果にどのように影響するかについては、さらなる調査が必要です。
  2. 音楽が医師に与える影響
    今回の研究では、ターゲットを患者としていましたが、音楽はそれを聴いている医師にも影響を及ぼすと考えるのが自然です。今後の研究では、どのような音楽がどのように医師に影響を与えるのかについても検証することが望まれます。

いかがでしたか?

このエピソードでは、ゆったりとしたピアノ音楽が大腸内視鏡検査の患者に与える影響を調査した研究をエダンズのピーター博士が紹介する様子をお届けしました。今後も興味深い研究について発信していきますのでお楽しみに!

エキスパートが独自の視点で選んだ、エキサイティングな研究をご紹介!

著者
Sun DJ, You YX, He XJ, Li HT, Zeng XP, Li DZ, Wang W.
出版年
2022
掲載誌
Medicine

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エダンズ・エキスパートのご紹介

Peter Milovanovic(ピーター・ミロヴァノヴィック)

ベオグラード大学医学部助教授。ハンブルク大学の科学者としても活躍、骨格系を専門とし人間解剖学の部門で働く一方、形態学的評価が必要な医学的トピックも扱う。使用する研究手法は、臨床画像法や先端顕微鏡、機械試験、免疫組織化学など幅広く、新技術の応用にも経験がある。60以上の論文を国際的な査読付きジャーナルに発表しており、そのうち40以上がインパクトファクターによる該当カテゴリのトップ30%にランクインしたジャーナルで公開され、1000回以上引用されている。また、査読者として高評価のジャーナルや資金提供機関で活動している。2017年からは、Edanz Groupの研究コンサルタントとしての活動も行う。

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