Quicktakes エピソード029
現代においては食事の摂取の方法が多様になりました。手間をかけずに食事を取れるようになったことは良いことですが、一方で、手軽にファストフードが食べられるようになったことで、生活習慣病患者の方々にとっては食事制限を遵守することが難しくなってきています。
このエピソードでは、マインドフルネスに着目して食事療法の遵守率を改善することを試みた最新研究を、エダンズのエキスパート・フィリッパ博士が紹介する様子をお届けします。堅実性の高い研究デザインを実現するための貴重なTipsも含まれていますので、お見逃しなく!
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食事の取り方を変える!マインドフルネスに着目した生活習慣病を改善?エダンズのフィリッパ博士を魅了した論文を4分間で解説します。
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解説のポイント
- ■ DASH食とは何か
- ■ マインドフルネスと食事療法の関係は
- ■ 堅実な治験デザインの例
- ■ 最新研究が与える臨床現場へのインパクト
この研究の背景は?
生活習慣病患者にとっては、食事療法の遵守が難しい
利便性の高い現代社会では高血圧の患者が増加しており、それにともない食事療法の重要性が高まっています。とりわけ注目されているのが、DASH食(Dietary Approaches to Stop Hypertension)による食事療法です。これは、野菜や果物、全粒穀物、ナッツ類、赤身の肉の摂取を促進し、飽和脂肪酸や加工肉、砂糖の多い食べ物や飲み物の摂取を控えることを奨励するもので、高血圧の治療に効果があるとされています。
しかし、食事療法の効果を得るには決められた食事を遵守しなければならず、その遵守自体が、高血圧のような生活習慣病患者にとっては難しいことが課題として挙げられています。
そこで、今回紹介する論文 Adapted Mindfulness Training for Interoception and Adherence to the DASH Dietは、マインドフルネストレーニングを導入することで、食事遵守の問題を解決できるかどうかを検証しています。
エキサイティングな研究手法・結果とは?
堅実な治験デザインで既存研究を踏襲
実は、この研究は完全に新しいものではなく、すでに他の食事療法に関して行ったマインドフルネストレーニングの結果が、DASH食にも当てはまるのか?という問いを出発点としています。したがって、研究の手法も既存研究の内容から大きく逸脱しないような形で設計されています。
研究チームは、マインドフルネスを活用してDASH食の遵守を向上させることが高血圧管理に及ぼす影響を探るため、無作為化比較試験(RCT)を研究手法として選択しました。
北米で行われたこの試験では、高血圧を有する201人の参加者を募集し、彼らをマインドフルネス介入群と標準ケア群の2つに無作為に分けました。参加者はいずれもDASH食を摂取するよう指導されましたが、介入群はさらに、血圧管理のために特別にデザインされたマインドフルネストレーニングを受けています。
具体的な介入内容として、マインドフルネス群の参加者は8週間にわたって計10回のマインドフルネストレーニングを受け、週に6回、各45分のマインドフルネスに関するアドバイスを受けました。このトレーニングは、自己認知、注意コントロール、感情調整などの内部意識の向上を目的としており、食事の遵守に対する内部的な動機づけを強化することを意図しています。
(優れたRCTの事例について紹介しているピーター博士のエピソードもぜひご一読ください!)
マインドフルネスは、食事遵守率を向上させることが明らかに
研究の結果、治療開始から3か月と6か月の時点でマインドフルネス群はコントロール群に比べて内的意識のスコアが有意に高く、DASH食の遵守率においても改善が見られました。特に、介入前に食事遵守率が低かった参加者の中で、マインドフルネス群は統計的に有意な改善を示しました。この結果は、マインドフルネスが特定の患者集団における食事遵守の向上に寄与する可能性があることを示唆しています。
さらに、マインドフルネス介入による食事の遵守向上が、収縮期血圧の有意な低下につながったことも報告されました。これは、マインドフルネスが自己調節の3つの側面(自己認知、注意コントロール、感情調整)を高めることで、健康的な食生活選択へと導いた結果と考えられます。
生活習慣病に対する食事効果に関する研究を紹介したエピソードもあわせてご覧ください!)
研究結果まとめ
マインドフルネス介入群 | 統制群 | |
---|---|---|
内部意識 | 向上 | - |
食事遵守率(全体) | 向上傾向 (統計的有意ではない) |
- |
食事遵守率 (遵守率が低い患者) |
向上 | - |
専門分野内外へ、研究がもたらすインパクト
生活習慣病研究と心理学研究の学際研究に大きく寄与
この研究は、高血圧管理におけるマインドフルネス介入の有効性を示すものであり、医学および心理学の分野における重要な貢献を提供します。特に、生活習慣病の予防および管理に関する研究領域では、伝統的な薬理学的介入や食事療法に加えて、精神的健康が身体的健康に与える影響に対する認識が高まっています。この研究は、心と体の相互作用を考慮した治療法の開発に向けた一歩となり、医療提供者が患者の生活習慣の変更を支援するための新たな手法としてマインドフルネスを取り入れる可能性を示しています。
エダンズのエキスパートが、独自の視点で切り込む!
堅実な研究デザインで、わかりやすい論文構成に!
この研究における最大の長所は、研究のイロハを抑えられた堅実な研究デザインを採用している点です。具体的には、以下のような点が優れていると言えるでしょう。
1. 明確な研究目的と仮説
研究は、マインドフルネス介入がDASH食の遵守を向上させ、それが高血圧の管理にどのように寄与するかを探るという明確な目的を持っています。このような明確な目的設定は、研究の意義と方向性を読者に伝えるのに効果的です。
2. 堅実な研究デザイン
無作為化比較試験(RCT)は、介入の効果を評価するためのゴールドスタンダードです。この研究デザインは、マインドフルネス介入の効果を信頼性高く評価するための強固な基盤を提供します。
3. 包括的なデータ分析
研究は、内的意識のスコアやDASH食の遵守率、血圧の変化など、複数の指標を用いて介入の効果を評価しています。このような多角的な分析は、研究結果の理解を深め、介入の影響をより広い視点から捉えることを可能にします。
4. 応用可能性の高さ
研究結果は、高血圧管理だけでなく、他の生活習慣病の予防と管理にも応用可能な示唆を提供しています。これは、研究の実践的な価値を高める要素です。
いかがでしたか?
このエピソードでは、マインドフルネスと食事療法の関係性を検証した最新の研究を、エダンズのフィリッパ博士が紹介する様子をお届けしました。今後も興味深い研究について発信していきますのでお楽しみに!