エダンズのフィリッパ博士が解説

RCTと最新テクノロジーを駆使!
糖尿病患者の食事反応の
個人差の要因は?

Quicktakes エピソード002

効果的に活用すれば、論文のクオリティを一気にい高めることができるランダム化比較実験(RCT)。しかし、RCTをデザインする段階で躓いてしまう人が多いのもまた事実です。今回は、RCTを用いて糖尿病前症患者への食事介入に個人差が出る要因を検証したエキサイティングな論文を、エダンズのエキスパート、フィリッパが解説します。フィリッパによる論文を書く上で役立つTipsも必見です!

最新研究をオリジナル動画で解説!

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00:00:導入

400:40:論文の概要

921:32:研究で用いられたユニークな技術

1552:35:結果

2203:40:研究の長所とインパクト

糖尿病予防の食事の効果に個人差が出る理由とは?栄養学の最新研究をエダンズの専門家が解説

英語プレゼンの参考に!ネイティブの発音で研究を語る

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解説のポイント

  • 栄養学に基づいた糖尿病予防の方法
  • 最新テクノロジーを駆使した研究の方法論
  • 優れたRCTの設計
  • 先端テクノロジーは採用すべき?

この研究の背景は?

食事反応の個人差は未解決の課題

「栄養学における研究課題として残っているのは、食事反応に関する個人差が大きいという点です」冒頭でエダンズのエキスパートフィリッパは語ります。今回彼女が見つけた論文「Gut microbiome modulates the effects of a personalised postprandial-targeting (PPT) diet on cardiometabolic markers: a diet intervention in pre-diabetes」は非常に面白い方法で、この課題に取り組んでいるのです。

エキサイティングな研究手法・結果とは?

パーソナライズされた食事 vs 地中海食!ランダム化対照実験の設計

この研究では、ランダム化対照実験を用いて食事反応の個人差の謎を解明しようとしています。実験では、200人以上の糖尿病前症の参加者を集め、参加者に6か月にわたって地中海料理または個人に合わせてパーソナライズされた食事を食べさせます。このパーソナライズされた食事は、各参加者の身体的特徴やライフスタイル、腸内微生物叢などの特徴に基づいて、食後の血糖反応を最小化するよう設計されています。 

この実験期間中、研究チームは参加者の臨床指標を追跡することで、食事反応の個人差の原因を追究していきます。

パーソナライズされた食事の効果は?食事反応の個人差の理由とは?

研究の結果、参加者の特徴に基づいて作られたパーソナライズされた食事を摂取していたグループの方が、地中海食を摂取していたグループと比較して、食後の血糖反応が有意に低くなることが明らかになりました。また、血糖値や血中脂質などの臨床的指標の改善を促すことも分かりました。 

さらに、マイクロバイオーム・シーケンシングの結果、9種類の腸内微生物が、食事の変化による臨床的帰結への影響の最大40%を媒介していることが判明しました。また、機械学習を用いることで、4種類のバクテリアが元々腸内に豊富に存在するという個人的条件が、食事介入に対する個人の反応を促進する上で重要となっているということを突き止めています。 

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専門分野内外へ、研究がもたらすインパクト

栄養学の今後と現実世界への応用

さて、この研究結果は栄養学研究あるいは現実への応用という観点で、どのような影響を与えるのでしょうか? 

フィリッパは、栄養学の観点からは「血糖値や微生物の種類などを今後の食事研究の交絡因子として含めるべき指標として使えるようになった」という点で非常に意義があったと言います。また、実世界への影響という観点からは、「栄養素のコントロールに基づきパーソナライズされた食事が臨床指標や糖尿病前症の改善に役立つこと」を評価した上で、食事管理アプリなどのテクノロジーへのアクセスが容易なことから「臨床現場内外での食事アドバイスの在り方に大きな影響を与えた」と述べました。


エダンズのエキスパートが、独自の視点で切り込む!

新しいテクノロジーを積極的に活用すれば、注目も集まる

① 食事記録アプリ 
参加者が食事をリアルタイムで記録するアプリです。これにより、参加者が各実験グループで同程度のカロリーを摂取していることを確認でき、それぞれの食事の栄養素についても把握することができます。 

② グルコースモニタリングセンサー 
参加者が血中グルコース値を継続的にモニタリングするセンサーです。このセンサーにより、従来の研究よりもはるかに高解像度のデータが得られます。

③ マイクロバイオーム・シーケンシング 
食事の変化が臨床的な結果に与える影響を、腸内微生物がどのように媒介しているかを調査するための分析技術です。腸内微生物の働きをより詳細に分析することができます。

このようなユニークなテクノロジーを積極的に検証プロセスに採用することで、検証のクオリティが高まるだけでなく、注目度という点でも恩恵を受けることができます。ユニークなテクノロジーを採用した研究は、こちらもご参照ください。

いかがでしたか? 今回は、食事反応の個人差に関する興味深い研究を、エダンズのエキスパート、フィリッパが解説しました。今後も興味深い研究について発信を続けていきますので、お楽しみに!

エキスパートが独自の視点で選んだ、エキサイティングな研究をご紹介!

研究者・著者の皆さまを、全力でサポートします

エダンズは、皆様が取り組む研究分野における研究のギャップを見つけだし、論文の校正、最適なジャーナル選択、そして研究の影響力を最大限に高めるためのコンテンツ作成まで、研究の全サイクルで一貫したサポートを提供します。

エダンズ・エキスパートのご紹介

Philippa Gunn(フィリッパ・ガン)

医学博士。12年以上にわたってヒトの健康に関する研究を行い、特に運動、栄養、クロノバイオロジー、生物医学、バイオテクノロジーの観点から代謝を分析することに関心を持つ。医学博士号取得後は、非アルコール性脂肪性肝疾患の発症における脂肪酸代謝への遺伝子と栄養素の相互作用の影響についての研究に従事したほか、直近では細胞農業の分野で脂肪細胞分化の最適化に携わった。細胞培養や分子生物学、介入研究とその臨床評価、オミックス技術と質量分析、食事摂取と大規模データセット分析など、幅広い方法論を得意とする。

他のエキスパートのコメント

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スコット博士

よく練られた研究です。栄養学はとても複雑なテーマなので、今後も進化し続ける分野だと確信しています。

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ピーター博士

このような論文を読むと、昔から言われている『You are what you eat(あなたはあなたが食べたものでできている)』が本当に正しいのか、考えさせられます。私はこのような食事介入、特にマイクロバイオーム解析には大きな可能性を感じています。しかし、メンタルヘルスの面も含めて、食べ物がどれほど私たちに影響を与えるかを目の当たりにするのは少し怖いですね。

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