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エダンズのティナ博士が解説

論文における
インパクト・ステートメント
気候変動と生態系の
相互作用の検証研究

Quicktakes エピソード039

現代社会においては、人間、環境、動物の健康は複雑な相互関係の様相を呈しており、健康という一つの概念について検討するにも、検討の幅は非常に広くなります。このような学際的な健康を捉える概念が「ワンヘルス」です。

このエピソードでは、ワンヘルスの観点から気候変動と人間の活動が、人間とげっ歯類の健康の相互作用にどのような影響を与えたかに関する最新の論文を、エダンズが誇る環境・健康科学のエキスパート、ティナ博士が紹介する様子をお届けします!

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00:00:ワンヘルスという概念の解説

851:25:モザンビークで行ったインタビューベースの研究内容

1202:00:インパクト・ステートメントの重要性

1782:58:人間とげっ歯類の健康上の相互関係

健康と気候変動、生態系は全て繋がっている!ティナ博士が注目する、ワンヘルスの概念から人間とげっ歯類の健康上の相互作用を分析した最新の研究をご紹介!

英語プレゼンの参考に!ネイティブの発音で研究を語る

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解説のポイント

  • ワンヘルスとは何か
  • 人間と人間を取り巻く環境・生態系の健康上の相互関係
  • インタビューを方法論として採用した最新研究の内容
  • インパクト・ステートメントの重要性

この研究の背景は?

健康を考える上で注目が高まる「ワンヘルス」の概念

現代の科学において、人間、動物、環境の健康は互いに深く関連しているという認識が高まっています。この相互依存の概念を「ワンヘルス」と呼び、特に動物から人間へと感染する病気の研究において重要視されています。COVID-19のパンデミックは、この相互作用の重要性を全世界に示しました。

今回紹介する「ワンヘルス」の概念に着目する学術誌「CABI One Health」に掲載された論文「Structural Drivers of Vulnerability at the Human-Rodent Interface in the Limpopo National Park, Mozambique」は、気候変動と人間による活動が、どのように人間とげっ歯類の健康上の相互作用に影響を与えるかを検証し、ワンヘルスの概念から健康問題を捉えることの重要性を示しています。

エキサイティングな研究手法・結果とは?

インタビューによる定性情報を用いた研究

この研究には、モザンビークの遠隔地域における人間とネズミとの相互作用を調査するために、社会学者、エコエピデミオロジスト、微生物学者など多分野の専門家が参加しました。研究手法としては、地域の成人および子供を対象にした詳細なインタビューが採用されています。研究チームは、インタビューを通じて過去70年間にわたる人間とネズミとの関係の変遷とその社会生態系への影響を詳細に把握することを目指しました。

人間の健康に影響を与える連鎖的要因

研究結果、モザンビークの村の住民と健康には以下のような要素が絡んでいることがわかりました。

生態系の変化:過去数十年間で気候が温暖化し乾燥化したことで、元々森林地帯に生息していたネズミの数が減少し、外来種が増加しました。また、物資の輸入など人間の活動によっても外来種が流入し、繁殖しています。

人間の居住形態の変化:大規模なインフラプロジェクト(例えばダム建設)により、住民は分散していた居住形態から集落での生活へと強制的に移動させられました。これにより、人間とネズミの接触頻度が増え、それがさらなる健康リスクを引き起こすことに繋がりました。

食料安全保障への影響:ネズミは人々の食糧を食べることで、接触する食糧の健康リスクを高めることがわかっています。インタビューによれば、一部の家庭では食料の最大50%がネズミによって失われており、病気のリスクが高いと考えられるため、その結果、汚染された食料は廃棄されてしまっています。

このように、気候変動や人間の活動、それに伴うネズミの生態系への影響が巡り巡って人間の健康に影響を与えていることが判明しています。

専門分野内外へ、研究がもたらすインパクト

公衆衛生を考える上で学術的・実学的な両面で意義のある研究

この研究は、気候変動と人間の活動がどのように病気の媒介者としてのネズミの分布と行動に影響を与えるかを示しています。これは、伝染病のリスク評価と管理において重要な情報を提供し、疫学・公衆衛生学の文脈に貢献しています。

また、実世界では、気候変動対策や公衆衛生、都市計画、農業政策など、多岐にわたる政策立案に役立つ洞察を提供し、特に、人間と野生動物の相互作用が増加する地域での政策策定への応用が期待できます。


エダンズのエキスパートが、独自の視点で切り込む!

インパクト・ステートメントで研究の重要性をアピール

研究の成果を公表する際の構成や書き方は、その情報がどれだけ効果的に伝えられるかを大きく左右します。今回紹介した研究の中でひときわ目を引くのは、明確なインパクト・ステートメントです。この研究では、150語のインパクト・ステートメントを用いて、以下の3つの観点を見事にまとめています。

  • 研究内容とワンヘルスの関連性
  • 研究により恩恵を受ける対象
  • 学際的アプローチによって生み出される情報のユニーク性

これにより、読者はすぐに研究の目的と成果の重要性を把握することができ、学術的な価値だけでなく、実用的な価値も理解しやすくなります。論文のインパクトを高めるためには、論文の内容はもちろんですが、校正や表現を工夫することも非常に重要なのです。(類似した概念であるハイライトセクション、キーポイントセクションの書き方についてはこちらのブログ記事もご参照ください)

いかがでしたか?このエピソードでは、ワンヘルスの観点から気候変動と人間の活動が、人間とげっ歯類の健康の相互作用にどのような影響を与えたかに関する最新の論文を、エダンズが誇る環境・健康科学のエキスパート、ティナ博士が紹介する様子をお届けしました。今後も興味深い研究について発信を続けていきますので、お楽しみに!ライターとしても定評のティナ博士による、その他のエピソードもあわせてご覧ください。

エキスパートが独自の視点で選んだ、エキサイティングな研究をご紹介!

著者
Figuié, et al.
出版年
2023
掲載誌
CABI One Health

研究者・著者の皆さまを、全力でサポートします

エダンズは、皆様が取り組む研究分野における研究のギャップを見つけだし、論文の校正、最適なジャーナル選択、そして研究の影響力を最大限に高めるためのコンテンツ作成まで、研究の全サイクルで一貫したサポートを提供します。

エダンズ・エキスパートのご紹介

Tina Tin(ティナ・ティン)

海氷地球物理学博士。南極でのフィールドワークと統計解析、海氷モデリングを組み合わせて海氷の形態と動態を探求し、気候システムにおける雪氷圏の役割の理解に貢献した。ヨーロッパとカナダで気候変動の影響を調査する研究チームを統括し、政策立案者向けの報告書を作成した経験を持つ。これまで60本以上の技術論文を発表し、うち15本は査読付き学術誌に掲載されたほか、気候変動と環境科学・管理に関する2冊の本を共同編集・共著している。International Journal of Wildernessのアソシエイト・エディターであり、European Association of Science Editorsのメンバー、Polar Research誌の特集号のゲストエディターでもある。Journal of Environmental ManagementやAustralian Antarctic Science Programを含む国際的な助成団体の査読者を務めるなど査読経験も豊富。

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