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エダンズのティナ博士が解説

補足資料を使いこなす!
地球の限界を調査した最新研究

Quicktakes エピソード030

プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)という言葉をご存じでしょうか?

これは、地球の環境システムの限界を表す概念ですが、人類の活動によってその限界が次第に近づいてきています。

このエピソードでは、プラネタリー・バウンダリーの現状を調査した最新の研究を、エダンズが誇る環境・健康科学のエキスパート、ティナ博士が紹介する様子をお届けするとともに、研究内容を幅広い読者層に届けるための貴重なTipsもお伝えします!

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00:00:プラネタリー・バウンダリー(惑星境界/地球の限界)とは?

731:13:プラネタリー・バウンダリーの現状

1652:45:地球と身体のシステムは似たもの同士?

2213:41:論文を多くの人に読んでもらうために

人類の活動によってプラネタリー・バウンダリー(地球の限界)を突破したことが明らかに!エダンズのティナ博士が重要性を強調する論文を4分間で解説します。

英語プレゼンの参考に!ネイティブの発音で研究を語る

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解説のポイント

  • プラネタリー・バウンダリー(惑星境界/地球の限界)とは
  • 9つのうち6つのプラネタリー・バウンダリーを突破している現状
  • 最新研究の影響
  • 簡潔な要約と図表、補足資料で読者層を広げる

この研究の背景は?

人類の活動により不安定化する地球システム

人類が地球上で農業を始めた約12,000年前から、人類の文明は地球の安定した条件の下で発展を遂げてきました。しかし、人類の活動が原因となり従来の安定したシステムが崩れようとしています。今回紹介する論文「Earth beyond six of nine planetary boundaries」は、「プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)(Planetary boundaries)」という概念を用いて、人類の活動が地球システムに与える影響と現在の深刻さを提示し、読者に対して警鐘を鳴らしています。

「プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)」とは、地球の安定性と回復力を維持するために必要なグローバルな生態学的プロセスのことを意味します。具体的には、気候変動、海洋の酸性化、化学物質汚染、新鮮な水の利用、土地の利用変化、生物多様性の損失、大気中エアロゾルの濃度、窒素とリンの循環、遺伝子レベルでの多様性が9つの境界として設定されています。

これらの生態学的プロセスが過度に乱されると、人類文明を支えてきた安定した条件を失う可能性があります。

エキサイティングな研究手法・結果とは?

9つのプラネタリー・バウンダリー(地球の限界)のうち、6つの限界を突破している

この重要な研究は、地球上の生態学的プロセスと人類の活動がどのように相互作用し、地球システムの安定性に影響を与えているかを評価するために、広範なアプローチを採用しています。29人の共著者たちは、8カ国から集まった多様な専門分野の研究者で構成され、地球の9つのプラネタリー・バウンダリー(地球の限界)に関する包括的な分析を実施しました。

評価には、最新の科学的データとモデリング研究が利用されています。具体的には、種の絶滅率、大気中の二酸化炭素濃度、人間によって作られた化学物質の環境への放出など、各境界を定量化するための指標が選定されました。さらに、これらの指標をもとに、現在の状態が歴史的なレベルや自然界での変動パターンと比較してどの程度異なるかを分析しました。

研究の結果、人類の活動によって地球システムの安全と見なされる9つのプラネタリー・バウンダリー(地球の限界)のうち6つがすでに超えられていることが明らかになりました。

具体的には、生物多様性の損失、気候変動、新しい化学物質の拡散が特に深刻な状況にあります。例えば、生物多様性の損失に関しては、種の絶滅率が過去1000万年の平均に比べて数十倍から数百倍高くなっており、気候変動については、大気中の二酸化炭素濃度が極端な気象変動や気候システムの他の変化を引き起こすレベルに達しています。また、人間によって作られた化学物質については、数十万種類が生産され環境に放出されており、その多くが地球システムへの影響について十分にテストされていません。

(人間によって作られた物質の一種であるマイクロプラスチックの地球全土への拡散に関する研究を解説した、マイケル博士のエピソードもご覧ください)

専門分野内外へ、研究がもたらすインパクト

社会的影響の大きい研究報告

この研究は、地球科学や環境学といった直接関連する専門分野はもちろんですが、経済学、政治学、社会学といった多様な分野において、環境の変化が経済成長のパラダイム、政策立案、社会的意識の変革などにどのように影響を与えるかを考察する上で重要な参考資料となっています。特に、持続可能な開発目標(SDGs)の達成やグリーンエコノミーへの移行、気候変動対策の政策立案において、この研究の結果は重要な意味を持ちます。

また、「プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)」というキャッチーな概念はメディアを通じて広く報じられ、地球の未来に対する深刻な懸念を共有することで、個人レベルでの持続可能なライフスタイルの選択や、環境に優しい政策への支持を促進しています。


エダンズのエキスパートが、独自の視点で切り込む!

大規模データセットの構築は、現代研究において非常に重要

この研究における最大の長所は、掲載誌がScience誌系列ということもあり、幅広い読者層に対してアプローチするための工夫が凝らされている点と言えるでしょう。具体的には、以下のような点が挙げられます。

1. 簡潔さと明瞭さ:
この論文は、わずか120語、たった7文のアブストラクトで9つのプラネタリー・バウンダリー(地球の限界)を要約するなど、非常に簡潔に書かれています。これにより、読者は重要なポイントを迅速に把握し、研究の重要性を理解することができます。

2. 情報の凝縮性:
主要な情報が2つの図と1つの表に凝縮されており、複雑なデータや結果を視覚的に理解しやすくなっています。このような表現方法は、学術的な内容を幅広い読者に伝える上で非常に効果的です。

3. 補足資料の充実:
36ページにわたる補足資料は、研究の詳細や裏付けを知りたい読者にとって価値あるリソースです。このように、核心部分を簡潔に保ちつつ、詳細情報を別途提供する構成は、多様な読者層に対応しています。

いかがでしたか?

このエピソードでは、地球システムの限界を示す「プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)」について調査した最新の研究を、エダンズのティナ博士が紹介する様子をお届けしました。今後も興味深い研究について発信していきますのでお楽しみに!

ライターとしても定評のあるティナ博士による、その他のエピソードもあわせてご覧ください。また、自然を愛するティナの飾らない休日の様子も好評です。

エキスパートが独自の視点で選んだ、エキサイティングな研究をご紹介!

著者
Richardson et al.
出版年
2023
掲載誌
Science Advances

研究者・著者の皆さまを、全力でサポートします

エダンズは、皆様が取り組む研究分野における研究のギャップを見つけだし、論文の校正、最適なジャーナル選択、そして研究の影響力を最大限に高めるためのコンテンツ作成まで、研究の全サイクルで一貫したサポートを提供します。

エダンズ・エキスパートのご紹介

Tina Tin(ティナ・ティン)

海氷地球物理学博士。南極でのフィールドワークと統計解析、海氷モデリングを組み合わせて海氷の形態と動態を探求し、気候システムにおける雪氷圏の役割の理解に貢献した。ヨーロッパとカナダで気候変動の影響を調査する研究チームを統括し、政策立案者向けの報告書を作成した経験を持つ。これまで60本以上の技術論文を発表し、うち15本は査読付き学術誌に掲載されたほか、気候変動と環境科学・管理に関する2冊の本を共同編集・共著している。International Journal of Wildernessのアソシエイト・エディターであり、European Association of Science Editorsのメンバー、Polar Research誌の特集号のゲストエディターでもある。Journal of Environmental ManagementやAustralian Antarctic Science Programを含む国際的な助成団体の査読者を務めるなど査読経験も豊富。

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