エダンズのティナ博士が解説

ハイライトを使いこなす!
読者を惹きつける論文の書き方

Quicktakes エピソード031

インパクトのある論文を書くために考える必要がある重要な要素の一つが、論文へのリーチ数をどう伸ばすか、すなわち、多くの人に読まれ、引用されるにはどうすればよいか?という点です。「ハイライトセクション」や「キーポイントセクション」は、論文へのリーチ数を伸ばすための最も大切な要素の一つと言えるでしょう。このエピソードでは、魅力的なハイライトセクションの書き方と参考となる論文を、エダンズが誇る環境・健康科学のエキスパート、ティナ博士が紹介する様子をお届けします!

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00:00:ハイライト・キーポイントセクションとは?

731:13:魅力的なハイライトセクションを持つ論文の紹介

1702:50:最新の研究の研究手法と結果は?

2053:25:理想的なハイライトの構成を最新研究から解説

魅力的なハイライトセクションが研究のリーチ数を決める?アメリカの魚の毒素と許容摂取量を検証した最新の研究をご紹介!

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解説のポイント

  • ハイライトセクション・キーポイントセクションとは?
  • ハイライトセクション・キーポイントセクションを書く際に陥りがちな罠
  • 魅力的なハイライトを作成するためには
  • 研究の限界を提示することの重要性
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論文執筆時のよくある悩みや陥りがちな罠

現在、多くの学術雑誌が「ハイライト」または「キーポイント」となるセクションの提出を求めています。「研究の内容は素晴らしいはずなのにあまり読まれない、あまり引用されない・・・」と思われている研究者の方は、「ハイライト」や「キーポイント」に原因があるかもしれません。

ハイライトセクション・キーポイントセクションとは?

通常、「ハイライト」、「キーポイント」セクションは、論文のタイトルとアブストラクトの直後に配置されます。それぞれ、3~5つの要点で構成され、各要点は約80文字以内になることが多いです。この部分は、論文の革新的な結果とその意義を簡潔に伝えることにより、研究に対する興味を喚起し、より多くの人に研究内容を深く知ってもらう機会を提供します。

ハイライトセクション・キーポイントセクションを書く際の課題

しかし、タイトルやアブストラクトに既に含まれている情報に加えて、付加価値を提供することができる魅力的なハイライトセクションを作成することは簡単ではありません。しかし、陥りがちな罠を知っていれば、他の研究者よりも魅力的なハイライト、キーポイントを書くことができるようになるはずです。

その陥りがちな罠とは、「ハイライトが単にアブストラクトの繰り返しになってしまうこと」で、ハイライトが提供するべき独自の視点や情報が不足している状態を指します。

ハイライトには、アブストラクトの内容に加えて、研究の目的、結果、そしてそれらの意義を明確に伝えるスキルが求められます。これは、特に研究成果を公表する段階で研究者が直面する重要な挑戦の一つなのです。

査読者も魅了するアブストラクトの書き方については、こちらもご参照ください。)

評価の高い論文を書くためのコツ

では、魅力的な「ハイライト」や「キーポイント」を書くにはどうすればよいのでしょうか?
書き方に悩んだ際は、以下の点を参照すると良いでしょう。

1. 研究のコアメッセージを明確にする
研究の最も重要な結果とその意義を理解し、これらを簡潔に伝えられるようにすることが重要です。これには、研究の目的、達成されたこと、そしてそれがなぜ重要なのかを明確にするとよいでしょう。

2.ターゲットオーディエンスを考慮する
誰が執筆する論文に最も関心を持つかを考え、そのオーディエンスに訴える言葉を選ぶことが重要です。専門家だけでなく、一般の読者や政策立案者などにも響くような表現を心掛けると読者層が広がります。

3. 具体性と明瞭さを重視する
抽象的な表現や専門用語の過度な使用を避け、具体的で分かりやすい言葉を選びます。ハイライトは、研究の新規性や影響を短いスペース内で伝えるため、明瞭さが求められます。(ただし、具体的すぎるとかえって読者を失う場合もありますので、適切なバランスを取る必要があります。詳しくは、こちらの記事をご覧ください。)

4. 追加価値を提供する
ハイライトはアブストラクトの繰り返しになっていないかを確認する必要があります。研究の特定の側面や、アブストラクトでは触れられていないインパクトのある結果を強調することで、読者に新たな視点を提供します。

5. ベストプラクティスの研究
効果的なハイライトセクションを持つ論文を読み、その構成や言い回しを研究することも有用です。成功例から学ぶことで、自身の研究をより効果的に伝える方法を見つけることができます。(以下のセクションで解説します)

ベストプラクティスとなる論文を紹介!

このセクションでは、研究のハイライトセクションが特に効果的に使用されている優れた論文「Locally caught freshwater fish across the United States are likely a significant source of exposure to PFOS and other perfluorinated compounds」を紹介します。

研究内容の紹介

この論文は、非営利団体とデューク大学が共同で行った研究で、アメリカ合衆国内の川や湖で捕獲された魚を人がどの程度食べることができるかを、血清中の化学物質(PFAS)を測定することで導出することを目的としています。

研究チームは、アメリカ全土から捕獲された淡水魚内のPFASを分析し、次に類似の魚を食べた人々の血清中のPFASレベルをモデル化して推定ました。この結果と、政府が公表する魚消費量の勧告と比較しました。その結果、1ヶ月に1回淡水魚を食べるだけで、1年間で人の血中PFASレベルを3倍以上に達してしまうことが判明し、既存の魚消費量の勧告がこの関係を十分に反映できていないことも明らかになりました。

魅力的なハイライトセクション

この研究のハイライトセクションでは、PFASを含む魚の場所、PFASの量、人間が健康に食べられる魚の量、人々の健康を守るための関連するポリシーについての発見を簡潔に伝えることに成功しています。(詳細は、ぜひ論文をご覧ください!)

これらのハイライトは、アブストラクトに含まれている情報を繰り返すのではなく、新しい追加情報を提供することで、魅力的な内容となっています。

モデルの仮定と不確実性の議論

実はこの研究には、もう一つ魅力的な点があります。それが、モデルの限界性を素直に認め、ディスカッションセクションで説明している点です。

食べた魚が血清中の化学物質レベルをどのように変化させるかをモデル化するには、いくつかの仮定を行う必要があります。この論文では、著者たちはそのモデルの仮定と不確実性について広範に説明しています。

このような説明は、研究のメッセージから注意をそらすと考える研究者もいますが、提出された原稿のどこかにこの情報が含まれていない場合、レビュアーからの大幅な修正や再提出の要求につながる可能性があるため、ぜひ論文を執筆する際は限界を提示することをお勧めします。(研究の限界が効果的に書かれた論文について、こちらのエピソードもご参照ください)

いかがでしたか?

このエピソードでは、論文の「ハイライト」、「キーポイント」セクションを書く際のコツと参考になる研究を、エダンズのティナ博士が紹介する様子をお届けしました。今後も興味深い研究について発信していきますのでお楽しみに!

ライターとしても定評のあるティナ博士による、その他のエピソードもあわせてご覧ください。

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エダンズ・エキスパートのご紹介

Tina Tin(ティナ・ティン)

海氷地球物理学博士。南極でのフィールドワークと統計解析、海氷モデリングを組み合わせて海氷の形態と動態を探求し、気候システムにおける雪氷圏の役割の理解に貢献した。ヨーロッパとカナダで気候変動の影響を調査する研究チームを統括し、政策立案者向けの報告書を作成した経験を持つ。これまで60本以上の技術論文を発表し、うち15本は査読付き学術誌に掲載されたほか、気候変動と環境科学・管理に関する2冊の本を共同編集・共著している。International Journal of Wildernessのアソシエイト・エディターであり、European Association of Science Editorsのメンバー、Polar Research誌の特集号のゲストエディターでもある。Journal of Environmental ManagementやAustralian Antarctic Science Programを含む国際的な助成団体の査読者を務めるなど査読経験も豊富。

他のエキスパートのコメント

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ピーター・ミロヴァノヴィッチ博士

健康増進を目的とした多くの食事法では、栄養豊富な成分を含む魚の摂取が推奨されています。しかし、この研究で取り上げられているように、魚は重金属やPFAS(パーフルオロアルキル物質)などに汚染される可能性があります。これは、食事の推薦がどれほど信頼できるかという疑問を投げかけていますね。

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