Quicktakes エピソード001
研究の手法は様々ですが、最近は技術の発達によるユニークな手法を用いた研究も増えてきました。仮想現実空間を再現するVRデバイスを用いた実験は、その一つと言えるでしょう。この記事では、頸部痛を持つ患者の心理的要因を解明すべく、VRゴーグルを駆使して実験をおこなったエキサイティングな論文を、エダンズのエキスパート、ピーターが解説します。優れた論文を書くためのピーターによるTipsも必見です!
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専門家が解説! 思い込みが首の痛みの原因?視覚と痛みの関係
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解説のポイント
- ■ 頸部痛と視覚の関係性
- ■ VRを使用したエキサイティングな研究手法
- ■ VRの医療現場への応用可能性
- ■ 統計アプローチを採用する際の注意点
この研究の背景は?
首の痛みは思い込みで変わる?
「首の痛みは心理的な原因で起こる場合もあります」とピーターは始めます。先ほど少し触れたように、頸部の痛みは組織の炎症や損傷だけでなく、患部を動作させることに対する怖れなど心理的な要因により影響を受けると言います。また、「この怖れは視覚的な認識による影響を受ける可能性がある」とのこと。
ピーターは、この首の痛み、動作への怖れ、視覚認識の関係性の謎の解明に挑む非常に面白い論文こそ、2023年にPLOS ONEに投稿された論文「Visual feedback manipulation in virtual reality to influence pain-free range of motion. Are people with non-specific neck pain who are fearful of movement more susceptible?」であると言います。
エキサイティングな研究手法・結果とは?
痛み、怖れ、視覚認識の関係性を検証する驚きの実験手法とは?
この研究では、非常に面白いアプローチが取られています。それが、バーチャルリアリティ(VR)を使った実験手法です。
具体的な研究方法について詳しく見てみましょう。研究チームは、75人の非特異的な頸部痛を持つ個人を対象とした横断研究を行いました。参加者は、VRヘッドセットを着用し、首をどの程度回転できるかをテストするのですが、注目するべきは、VRを利用して実際の首の回転よりも±30%回転していると、視覚を通じて参加者に思い込ませている点です。
VRを用いた先端研究については、こちらもおすすめです。
首の痛みは視覚認識によって変わる!
この研究の結果は、非常に興味深いものになりました。頸部の動作に対して怖れを感じる参加者に、実際の首の動きよりも小さく首を動かしていると視覚的に思い込ませた場合、参加者は本来痛みを感じる水準よりも大きく首を回転させることが可能であることが示されたのです。
反対に、実際の首の動きよりも大きく首を動かしていると視覚的に思い込ませると、参加者は痛みを感じる水準に達する前に首の回転を止める傾向がありました。
専門分野内外へ、研究がもたらすインパクト
研究の将来性や限界についてエキスパートが語る!
ピーターはこの研究を非常にエキサイティングなものであると高く評価しているようです。特に、痛みが動作対する怖れや視覚的な認識を操作することによって制御できる可能性があるという今回の発見は、臨床的な価値を持つと考えています。さらに、「この分野での研究を活性化させる論文であった」と、この研究を歓迎していました。
エダンズのエキスパートが、独自の視点で切り込む!
サンプルサイズの大きさと、階層化で統計分析の質を高める
一方で、「これが論文の価値自体を損なうというわけではないが、次の2点が克服できていれば、より良い研究になったはず」とピーターは付け加えます:①75人というサンプルサイズが非常に小さい。②動作に対する恐怖やVRによる処置に階層性が無い。エキサイティングな論文でも研究者としての指摘を忘れないピーター。数々の論文を出版し、査読してきた研究のエキスパートとしての責任感を感じます。
いかがでしたか? 今回は首の痛みと怖れ、視覚に関する面白い研究を、エダンズのエキスパート、ピーター・ミロヴァノヴィックが解説しました。今後も興味深い研究があれば共有していきますので、お楽しみに!
他のエキスパートのコメント
マイケル博士
魅力的な研究の素晴らしい分析です。身体と心との間に相互作用があることは誰もが知っていますが、この研究はそれを明らかにするために非常に革新的なアプローチを用いていますね。