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多くの人の悩みとなる首の痛み。この首の痛みの原因は何なのでしょうか?
多くの人が真っ先に思いつくのは、患部となっている頸部の炎症や損傷などの物理的な原因です。しかし他方で、私たちの視覚認識や動作への恐怖感などの心理的な原因が首の痛みへ影響している可能性も提唱されているのです。
この記事では、この首の痛みと動作への恐怖感、視覚認識に関する最新かつ非常に興味深い研究を、エダンズが誇る医学・健康科学のエキスパートPetar Milovanovic(博士)が紹介していきます。(Petarによる解説はYoutubeでもご視聴いただけます。ぜひ、併せてご覧ください!)
首の痛みは思い込みで変わる?
「首の痛みは心理的な原因で起こる場合もあります」とPetarは話し始めます。先ほど少し触れたように、頸部の痛みは組織の炎症や損傷だけでなく、患部を動作させることに対する怖れなど心理的な要因により影響を受けると言います。また、「この怖れは、視覚的な認識による影響を受ける可能性がある」とのこと。
Petarは、この首の痛み、動作への怖れ、視覚認識の関係性の謎の解明に挑む非常に面白い研究こそ、2023年にPLOS ONEに投稿された論文「Visual feedback manipulation in virtual reality to influence pain-free range of motion. Are people with non-specific neck pain who are fearful of movement more susceptible?」であると言います。
痛み、怖れ、視覚認識の関係性を検証する驚きの実験手法とは?
この研究では、非常に面白いアプローチが取られています。それが、バーチャルリアリティ(VR)を使った実験手法です。
具体的な研究方法について詳しく見てみましょう。研究チームは、75人の非特異的な頸部痛を持つ個人を対象とした横断研究を行いました。参加者は、VRヘッドセットを着用し、首をどの程度回転できるかをテストするのですが、注目するべきは、VRを利用して実際の首の回転よりも±30%回転していると、視覚を通じて参加者に思い込ませている点です。
首の痛みは視覚認識によって変わる!
この研究の結果は、非常に興味深いものになりました。
頸部の動作に対して怖れを感じる参加者に、実際の首の動きよりも小さく首を動かしていると視覚的に思い込ませた場合、参加者は本来痛みを感じる水準よりも大きく首を回転させることが可能であることが示されたのです。
反対に、実際の首の動きよりも大きく首を動かしていると視覚的に思い込ませると、参加者は痛みを感じる水準に達する前に首の回転を止める傾向がありました。
VRを使った最先端の研究は他にもある!こちらもぜひお読みください。
研究の将来性や限界についてエキスパートが語る!
Petarは、この研究を非常にエキサイティングなものであると高く評価しています。特に、痛みが動作対する怖れや視覚的な認識を操作することによって制御できる可能性があるという今回の発見は、臨床的な価値を持つと考えています。さらに、「この分野での研究を活性化させる論文であった」と、この研究を歓迎していました。
一方で、「これが論文の価値自体を損なうというわけではないが、以下の部分が克服できていれば、より良い研究になったはず」と、Petarは付け加えます。
・75人というサンプルサイズは、非常に小さい
・動作に対する恐怖やVRによる処置に階層性が無い
エキサイティングな論文でも研究者としての指摘を忘れないPetarの解説には、数々の論文を出版し、査読してきた研究のエキスパートとしての責任感が表れています。
今回は首の痛みと怖れ、視覚に関する面白い研究を、エダンズのエキスパートPeter Milovanovicが解説しましたが、いかがでしたか?今後もエダンズチームのメンバー達が、様々な分野のエキサイティングな研究について、ご紹介していきます。 ⬛
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