エダンズのティナ博士が解説

システマティックレビューの重要性
緑地と幸福の関係性をレビュー

Quicktakes エピソード020

現代社会において、都市部に住む人口が急速に増加しています。国連のデータによると、世界人口の半数以上が都市部に居住しており、この傾向は今後も続くと予想されています。都市化が進む中で、都市住民の生活品質や幸福感への影響が重要な問題となっています。特に、都市部における緑の空間(公園、庭園、自然保護区など)が、住民の精神的および身体的健康に与える影響についての関心が高まっています。

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00:00:オープニング

330:33:緑地と幸福度の関係性?

1011:41:幸福度を高める緑地の条件は?

1342:14:緑地の効果を高める心理的な条件は?

2514:11:幸福度の定義とは?

この動画では、自然を愛するティナ博士が注目した都市部の緑地と、その地域の人々の幸福度に関する最新のレビュー論文を、システマティックレビューの長所と課題も交えてご紹介しています。

英語プレゼンの参考に!ネイティブの発音で研究を語る

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解説のポイント

  • 緑地と幸福度の関係性とは?
  • 緑地に関する認識を決める要因は?
  • システマティックレビュー論文を書くためのコツ

エキサイティングな研究手法・結果とは?

緑地と幸福度の関係を決める様々な要素が判明

そこで、今回ご紹介する論文「Happiness in urban green spaces: A systematic literature review」は、システマティックレビューを行うことで、自然と幸福度の関係性の解明を試みています。研究チームは、世界中の21カ国で行われた57件の研究を包括的に分析しました。レビュー対象の論文の研究方法は、アンケート調査、面接、社会メディアでの写真分析など、多岐にわたります。

研究結果サマリー

  • 緑地へ頻繁にアクセスできる環境により、幸福度は上がる
  • 緑地が大きいと幸福度が上がる
  • 緑地の大きさは、主観的な要素の影響を受ける
  • 収入や安全性などの要素も、緑地と幸福度の関係に影響を与える

研究の結果、人々が緑地に容易にアクセスできる、または頻繁に訪れることができる場合、一般的に幸福感が高くなることを示しています。例えば、中国とメキシコの研究では、週に少なくとも一度緑の空間を訪れる人々は、生活満足度が高いと報告されています。さらに、これらの空間の大きさや、訪問者がどれだけの頻度で訪れるかなどの客観的な測定値も、幸福感に影響を与える重要な要因であることが分かりました。

一方で、いくつかの研究は、緑の空間の主観的な経験が人々の幸福感に大きな影響を与えることを示しています。安全性、愛着、馴染みの度合いなど、個人が感じる緑の空間に対する経験や感情が、特に高齢者の幸福感に寄与することがわかりました。例えば、日本での研究では、神社周辺の緑の空間が、学校や公園など他の緑の空間よりも広く感じられることが示されました。

しかしながら、自然と幸福度の関係は、収入や安全性の認識など他の要因によって変化することも明らかになりました。例えば、中国での2件の研究では、人々の収入が一定レベル以上の場合にのみ、緑の空間が幸福感を高めることが報告されています。

専門分野内外へ、研究がもたらすインパクト

「緑地×幸福度」は、様々な分野に応用可能

この研究の成果は、都市計画、環境心理学、公衆衛生、社会学など多くの専門分野において重要なインパクトを持ちます。都市計画においては、緑の空間の配置や設計が都市住民の幸福感に与える影響を理解することは、より人間中心の都市環境を構築する上で不可欠です。例えば、公園や緑地が充実している地域は、居住者の生活の質を高めることができるため、これらの要素を都市開発に組み込むことの重要性が強調されます。


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システマティックレビューを書く際のコツと注意点は?

このレビュー論文に関して、ティナは以下のような長所と課題を示しています。システマティックレビューを書く場合は、この内容を参考にすることで、より優れたレビューを書くことができるでしょう。

長所:

  • 多角的なアプローチ:研究は21ヶ国のデータを包括的に分析しており、地域的な多様性を考慮しています。このような広範なデータセットを使用することで、結果の一般化可能性が高まります。
  • 多様な研究方法:アンケート調査、面接、社会メディア分析など、さまざまな方法論を採用していることは、幸福感と緑の空間の関係を多角的に捉える上で有効です。
  • 複合的な分析:客観的な測定値(例えば、緑の空間の大きさやアクセスの容易さ)と主観的な経験(安全性や愛着)を組み合わせた分析は、都市環境と幸福感の関係を深く理解する上で重要です。

一方で、この研究には「幸福感の測定に一貫性が欠如している」という課題があります。測定の基準が異なると、レビューとして統合する際に、比較することが難しくなってしまいます。システマティックレビューを書く場合には、尺度についてしっかりと確認することが重要です。

システマティックレビュー論文の書き方については、こちらもご覧ください。

いかがでしたか?

今回は台風や熱帯性低気圧が都市や市街地の樹木に及ぼす影響に関するレビュー論文を、エダンズのエキスパート、ティナ・ティンが解説しました。今後も興味深い研究について発信を続けていきますので、お楽しみに!

エキスパートが独自の視点で選んだ、エキサイティングな研究をご紹介!

著者
M.S. Shamili, et al.
出版年
2023
掲載誌
Urban Forestry & Urban Greening

研究者・著者の皆さまを、全力でサポートします

エダンズは、皆様が取り組む研究分野における研究のギャップを見つけだし、論文の校正、最適なジャーナル選択、そして研究の影響力を最大限に高めるためのコンテンツ作成まで、研究の全サイクルで一貫したサポートを提供します。

エダンズ・エキスパートのご紹介

Tina Tin(ティナ・ティン)

海氷地球物理学博士。南極でのフィールドワークと統計解析、海氷モデリングを組み合わせて海氷の形態と動態を探求し、気候システムにおける雪氷圏の役割の理解に貢献した。ヨーロッパとカナダで気候変動の影響を調査する研究チームを統括し、政策立案者向けの報告書を作成した経験を持つ。これまで60本以上の技術論文を発表し、うち15本は査読付き学術誌に掲載されたほか、気候変動と環境科学・管理に関する2冊の本を共同編集・共著している。International Journal of Wildernessのアソシエイト・エディターであり、European Association of Science Editorsのメンバー、Polar Research誌の特集号のゲストエディターでもある。Journal of Environmental ManagementやAustralian Antarctic Science Programを含む国際的な助成団体の査読者を務めるなど査読経験も豊富。

他のエキスパートのコメント

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スコット・ロング博士

レビュー論文の目的に関する良い解説となっています。トピックとしては、ハリケーンがダメージを受けたサンゴ礁にどのような利益をもたらすかについての2007年の研究と少し似ているところがあります。(Hurricanes benefit bleached corals

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ピーター・ミロヴァノヴィッチ博士

トピックの選び方と世界の多様な地域が含まれているのが良いです。それに加えて、システマティック・レビューの可能性とその限界に関して、とても勉強になる内容になっています。

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